第7章 ノイズの交差点

「クラスの女の子はみんな好きなんだよ。それから、ここだけの話なんだけど」

CMに入るや否や、菜々子ちゃんが声のトーンを落として囁く。

「お兄ちゃんも本当はラブリーン、好きなんだよ」

「えっ！？本当！？」

「うん、だって菜々子見たよ。お兄ちゃんのお部屋の本棚にラブリーンの本があった」


鳴上先輩の意外過ぎる一面。


あまりのギャップに笑いをこらえる私。


CMが終わり、画面の中からは「愛に疑問を感じたら、素行調査は弊社におまかせ！」と可愛らしい声で物騒な台詞が聞こえて来る。


「今度ね、菜々子、おとうさんにラブリーンのお洋服買ってもらうんだ」


そんな私に気付かずに目を輝かせて話す菜々子ちゃん。


「そ、それは楽しみだね！」


どうか、鳴上先輩の叔父さんが「公平に」と二着買ってきませんように。


やがてラブリーンが終わり、夕方のニュースが始まる。

そこでも一番最初に報道されたのは、りせちーの休業報道だった。


「あ、りせちゃんだ！菜々子、りせちゃん大好き！」


「折角人気出て来たのに、芸能界辞めちゃうなんて、びっくりだよね」


「ねぇ、睦月ちゃん。りせちゃんって今この街にいるんだよね？いつか菜々子も会えるかなぁ・・・」