【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第1章 4月に芽吹くヒーロー
経験したことのない浮遊感に身を任せ、転がり落ちた先は、異様な空間だった。
足元に拡がる殺人現場を思わせる様な人の形の模様。
むき出しになった鉄骨。
果てしなく広がる黄色い霧の世界。
打った腰の痛みに、どこかから落下したのだと思い上を見上げてみるが、どこまでも上に伸びる鉄骨ばかりで穴や出入り口のような物は見当たらない。
ましてやテレビの画面など。
不安に駆られるのと同時に睦月はここへ行きついた目的を思い出す。
「そうだ・・・先輩達を、花村先輩を探さなきゃ・・・」
ほんの数分前、睦月の目の前で間違いなく先輩達はテレビの中へ吸い込まれていった。
それならば先輩達もこの空間に居るに違いない。
(里中先輩・・・ごめんなさい)
自分を心配して止めてくれた千枝の事を思うと、少し胸が痛む。
辺りを見回すと、視界の隅に何かが落ちているのに気が付いた。
近づいて拾い上げてみると、それは指輪だった。
プレーンなデザインで一見どこにでもあるような物だったが、睦月はそれが誰のものか一目で判った。
―あの時、花村先輩と初めて出会った時から見ていたそれを間違えるはずがない。
それを握りしめ、落ちていた方向へ駆け出す。
視界は霧で覆われて先の見通しがきかないが、その先に想い人が居る事を信じて。