第3章 悪夢の先へ
少し考えたような素振りをして、亜依は俺に問いかける。
『逆に鋭児郎はクラスの中で誰と付き合いたいの?』
予想外だった。
まさか質問を質問で返してくるとは。
「俺にはみんなもったいねぇよー笑」
少し冗談っぽくあしらって返答を待つ。
この数秒がどれだけ長かっただろうか。
『私はねー…』
彼女が答えようとした瞬間、ドアの開く音が聞こえた
「あら、お邪魔だったかしら…」
『あっ!梅雨ちゃん!やっほー(´ω`)』
少し静止したものの、すぐにはっとして言葉を返す。
「リンゴも食べたし、俺はもう大丈夫だから2人で残り時間ゆっくりしてて!みんなに元気だったって伝えとくな!」
少し早歩きで、手を振ったあとドアを閉めた。
あと少し梅雨ちゃんが遅かったらって考えたけど後の祭りである。
次のチャンスを待つしかねぇか。
ーーー
病室に入ろうと手を伸ばした時、
切島ちゃんの声が聞こえた。
「クラスメイトの中で付き合うとしたら誰がいい?」
聞いてみたいけれど、私ではないのは分かってる。
だからこそ、亜依ちゃんのセリフを遮ってドアを開けた。
「あら、お邪魔だったかしら?」
切島ちゃんは少し慌てて、私たちを二人きりにしてくれた。なんだか悪いものね…
「さっきまでなんの話してたの?」
『クラスメイトの中で付き合うとしたら?って話してたんだよー!』
全くこの子は危機感がない。
でも、そっちの方が好意をより深く伝えられる。
「クラスメイトの中で。だから、女子も含まれるのよ。ケロッ」
手のひらの上に手を被せ、改めて聞いてみる。
『うちが好きでも相手が嫌がると思うし、梅雨ちゃんや鋭児郎、他のみんなも好きな子がいるから別にそういうのは言わないかなー』
「そう…まぁ決めつけは良くないものね。ゆっくり考えてくれたら嬉しいわ。」
亜依ちゃんは頭にハテナを浮かべているが、
先程の笑顔の破壊力で、何も言い返せなくなってしまった。
これは、割と手強いかもしれないわ…