第3章 悪夢の先へ
何度も何度も、同じ夢を見る。
その夜には決まって過呼吸を起こす。
近くに誰かいないと、尚更。
「こいつの個性ダサくねー?」
「なー、女だったらもっといい個性の方がいいのに、可哀想だな。」
毎回人は違うが、言っていることは似ている。
「お前なんていなくなればいいのに。」
私の嘆きは彼らには届かない。
個性が出ていても、没個性じゃ意味が無い。
小さい頃、周りの子達に個性が原因でひどく言われていた。
それがトラウマで今もこうして夢に出てくる。
だからいちいち人の言うことを気にしてしまうし、
相手には悪気もないことも自分には悪く捉えてしまう。
「この出来損ないが。」
目を開ければどこかの病室にいるようで、
それにほっとしたのもつかの間、さっき見た夢が
吐き気をもよおした。
『…うっ…かはっ…』
「えっ亜依、大丈夫!?」
ずっと私を見ていてくれたのであろう出久が慌てて誰かを呼びに行こうとする。
『こ…わい、いか…ないでッ』
出久の腕を握りしめる。
彼は何も言わずに私の肩をさすって大丈夫と続けてくれた。
ずっと出久の腕を強く握って泣き続けた。
吐き気が収まって来た頃にやっと水も飲めるようになって腕を離す。
『ごめん!ずっと握ってて…痛かったよね。』
「ううん、全然大丈夫!亜依こそ…結構うなされてたし…助けに行けなくてほんとに…」
またブツブツ言い続け始めたので頭を撫でた。
「えっ!こ…こういうのは、僕がやる方なのに!」
『まぁまぁ、たまにはいいじゃん。』
そういって立ち上がろうとすると、出久に押さえつけられた。
えっえっ
「ここ病院!雄英が管理してるから安全なんだけど、僕は相澤先生に言われて様子を見に来たんだ。
亜依は2日間ここで安静にしてないと行けないよ」
聞いてないんですけど。
まぁ今目が覚めたからだけど。
それだけ言って、出久は寮に帰っていってしまった。
暇だな。
もう一度寝てしまおうかと思ったが、夢を見るのが怖い。
外を見て過ごすことにした。