第9章 特別な1日 ( 大神 万理 2019生誕 )
ゆっくりとベッドに愛聖を降ろしながら、それでも離れたくなくて何度も、何度もキスをする。
静かな部屋に、リップ音の隙間から零れる甘い吐息と衣擦れの音だけが聞こえて。
それが、ここには俺たちしかいないんだと言うことを・・・余計に意識付ける。
触れ合う肌が、お互いの体温を分かち合う。
溶け合う吐息も、愛聖自身の甘い香りも・・・全部、俺がいつも欲しくて欲しくて・・・仕方がなかった物で。
お互いがお互いのものだという証を散らしながら、
その心地良さに律動を覚えて、お互いに求めあっては何度も与え合い、それはお互いが果て尽くすまで・・・繰り返された。
温めのシャワーが、体の火照りを攫っていく。
一晩に2度もシャワーを浴びるなんて、そうそうないけど。
今夜は、特別な夜だから。
洗った髪から流れ落ちる泡を掬いながら、ふと、バスルームの鏡を見て苦笑する。
「やってくれたな、愛聖」
俺の首筋に、2つの小さな紅いシルシ。
それを指先で触れながら、さっきまでの事を思い浮かべてしまう。
今夜は一段と、甘い夜だったな・・・と。
愛聖を抱くのは初めてじゃないし、今までだって休みが合えば何度もそういう事はあったけど。
だけど不思議と、何度抱いても、その度に初めて抱くような感覚に陥って・・・つい、夢中になってしまうんだよな。
あの、まるで譫言のように俺の名前を何度も呼ぶ声が甘くて。
たまらなく愛おしくて、離れたくなくて、何度も・・・求めてしまった。
「また、無理させちゃったよな・・・もっと余裕のある男にならないとダメだな」
ひとり呟きながら、キュッと髪の水気を払ってバスルームを後にすれば、ソファーには先にシャワーを浴びた愛聖が丸まってすぅすぅと寝息を立てていた。
「やっぱり・・・だから一緒に入る?って聞いたのに」
俺の前だけで見せるそんな姿も胸の奥を擽って・・・とか、いつまでも惚気けてる場合じゃないな。
そっと髪に触れてみれば、それはちゃんと乾かしてあって、それなら俺もと手早く髪を乾かし、愛聖を抱き上げてベッドまで運んだ。
「おやすみ、愛聖」
そう言って隣に寝転び、ベッドサイドのランプを消した。