第9章 特別な1日 ( 大神 万理 2019生誕 )
食事を終えて愛聖をシャワールームへと送り出し、その片手間を使って俺は食器洗いや作り置き用のおかずを容器に詰めては冷凍庫へとしまっていた。
それでも時間がまだ余っていて、愛聖が泊まるなら・・・とベッドメイクを楽しんでいた。
どうせなら、地方ロケで疲れた体をゆっくりと休めて欲しいから。
ただ、それだけ。
べ、別に愛聖が泊まるからってシーツを取り替えたりしてる訳じゃないぞ!
うん、違うぞ!
それでも新しいシーツに体を沈ませる愛聖を想像しては、小さな笑みが浮かんでしまう。
『万理・・・クッション抱きしめて何ニヤけてんの?』
「なっ・・・愛聖、シャワーから出てたのか」
『出てたよ、結構前に。向こうに万理の姿が見えなかったから、もしかして先に寝ちゃったのかと思って見に来たら、万理ってばシーツ取り替えたりしながらニヤニヤしてるんだもん・・・なんか、やらしぃなぁ』
「やらし・・・って、違う!そんなの全然考えてないからな・・・」
そりゃあ、俺だって一応ちゃんと成人してる大人だし?
普段は堂々と外では触れ合えないんだから、こんなときくらいは・・・なんて、考えなくもない。
だけど事務所や世間では、俺は小鳥遊プロダクションの事務員で。
愛聖は、小鳥遊プロダクション所属の売れっ子女優で、しかも普段はアイドリッシュセブンのメンバーとの寮生活。
だから、大っぴらには・・・触れ合うことは出来ないんだから。
それも時には寂しくなるけど、そういう世界にいるんだから仕方がないというか。
ま、極々たまにだけど。
誰もいない事務所の給湯室や、愛聖を寮に送り届けた時の・・・ちょっとした物陰なんかでは、ハグやキスくらいならって、してるけど。
だって、そうでもしないと・・・心が空っぽになりそうだから。
千や百くんは、そんなの関係なしに構い倒してくれるから。
そういう所、千たちは得してるよな。
デビュー前からの昔からの知り合いで・・・なんて言って、どこでもイチャイチャイチャイチャ出来るんだから。
さすがに俺だって、妬け・・・いやいやいや。
俺は大人だし、愛聖や千や百くんの中で1番年上だし・・・と、髪を乾かしに戻った愛聖のいる方へと視線を移しながら、小さくため息を吐いた。