第9章 特別な1日 ( 大神 万理 2019生誕 )
たくさんの荷物を抱えて帰宅して、夕飯の支度を終えてからシャワーを済ませれば、ご飯が炊ける香りが鼻を擽った。
ちょうど炊きあがる頃か・・・だったら、髪はこのままでもいいかな?と、タオルドライのままの濡髪を軽く纏めあげて愛聖が置いてったヘアクリップを借りて留めた。
「それにしても静かだな。いっそテレビでもつけるか」
そう思ってリモコンに手を伸ばすと、インターフォンが軽快な音を鳴らして来客を告げる。
こんな時間に誰だろう?
・・・って言っても、普段より数時間も早く帰って来てるんだから、こんな時間っていうほどの時間じゃないか。
インターフォンのモニターを見ながら応答ボタンに触れてみる。
「はい・・・」
ー あの、大神万理さんにお届けものです ー
宅配便か。
「分かりました、いま行きます」
サッと印鑑を手にして玄関のドアを開ければ、そこには。
「愛聖?!え、あれ?地方ロケで帰りは明日の夜だったんじゃ?」
予想もしていなかった人物に、ドアノブから手を離すのも忘れてまじまじと愛聖を見つめる。
『予定ではそうだったんだけど、千や百ちゃんが殆どノーテイクで頑張ってくれたからお昼には私が出るシーンが撮り終わったの。それで、社長にも連絡したら万理の所に帰ってもいいよって』
「え、社長が?」
『うん。私も万理が遅くまで仕事あるなら寮に帰るって言ったんだけど・・・大丈夫だよ、今回だけは特別だからね?って』
なるほど・・・社長、やっぱり気を使ってくれてたんだ。
「宅配便っぽかったから、愛聖が立っててびっくりしたよ。あ、ご飯は?俺これからだったから、まだたべてないんなら一緒にどう?」
『やった!実はお腹ペコペコだったんだよね。とにかく早く帰りたくてご飯すっ飛ばして来たから。あ、紡ちゃんには私が帰る支度してる時にちゃんと食べさせたから安心して?』
ちゃんと自分も食べなきゃダメだろ?なんて言いながら部屋の中へと招き入れ、2人分の食事を配膳する。
さっきまで1人で過ごす夜だと思っていたから、愛聖と過ごす時間が出来たことの嬉しさを隠せずにいる自分がいた。