第8章 なんだか照れるね··· ( 逢坂 壮五 )
撮影当日、見事なまでに晴れ渡った空を見上げながらスタッフさんに準備をして貰う。
「今日はデート日和ですね、逢坂さん?」
「はい。天気がよくて、皆さんのお仕事がスムーズに進みそうで安心です」
スタッフに声を掛けられ返事をするも、もっと他に言える言葉はなかったんだろうかと反省する。
『お待たせしました逢坂さん。えっと···どう、かな?』
ひらりと軽く回って、スカートの裾をちょんっと摘んで見せる愛聖さんは、とても可愛らしくて。
「よく、似合ってると思うよ」
なんとなく少し照れながら、正直に感想を伝える。
『良かった···スタイリストさんがいろいろと用意をしてくれてて、自由に組み合わせて来て下さいね?とか言うから、ちょっと心配で』
大丈夫、心配いらないくらいオシャレだからと言えば、それはそれでお互いに慣れない事に照れてしまう。
「おふたりさん?そろそろ撮影始めるけど、いいかな?」
にこやかな顔で僕達に声をかける監督が、僕を見て、それから愛聖さんを見てから···イイネ~!と嬉しそうに言って僕達の肩を叩いて歩いて行った。
『今日は、最初は少し対談してから撮影って言ってたけど···どんな仕上がりになるのか楽しみですね』
「そうだね。僕はこういう仕事は初めてだから、大先輩である愛聖さんの足を引っ張らないように頑張るよ」
『また逢坂さんはそんな事を言う』
愛聖さんは、事務所的には僕達アイドリッシュセブンの後輩だと言ってはいるけど、八乙女プロダクションに数年在籍していたから業界的には大先輩だから。
それから程なくして、テーブルを挟んだ対談という名目の取材をされた。
内容的には、もし僕達が恋人同士だったらどんなデートをしたいか?とか。
憧れのシチュエーションはどんなものがあるか?などいろいろで。
僕はそんな経験も想像力も乏しくて時々は言葉に詰まってしまったけれど、そういう時は愛聖さんがスッとカバーしてくれたりして事なきを得た。
愛聖さんは女の子なだけあって、僕が相手なら読者はこんなシュチュエーションで夢を見るんじゃないかだとか、こんなシーンがあったらキュンキュンするんじゃないかとか意見をいろいろ出していて。
監督もそれなら実際カットに収めてみようと乗り気で。