第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
朝のあの話が、ふとした瞬間に頭を過ぎる。
そして社長の言葉。
ひとりでそうなった訳じゃない···とか言ってたよな?
小「万理くん、悪いんだけど僕にコーヒー入れて貰ってもいいかな?」
「あ、はい。俺もちょうどキリがいいので、すぐにお持ちします」
パソコンを閉じ、給湯室へと向かうと人の気配がして、他にも誰かがコーヒーでも入れてるのかと思いながら中へ入ろうとすれば。
「愛聖?···どうした?!」
流しを覗くように屈みこみ、少し苦しそうに呼吸をする愛聖がいて。
『だ、大丈夫。ちょっと気分が悪かっただけ』
「気分がって、結構辛そうだけど」
体を起こした愛聖を支えるように自分に預けさせて、少しでも楽な姿勢になれるように背中に手を回す。
「そう言えば、愛聖はどうしてここに?今日は確かオフだったよね?」
今朝、社長と話してるのを聞いてたなんて言えないから、あたかもスケジュールチェックをしてたかのように聞いてみる。
『万理に···聞いて欲しい事があって』
いつになく真剣な顔をした愛聖が、給湯室の隅っこで俺の顔を見上げる。
「俺に?なんだろ?」
···あ、あれ?
ちょっと待って??
この展開って、夢と似てる?
「そ、それで、話って?」
『うん···それなんだけど···』
「なに?」
『私···出来ちゃったみたい』
ゆ···夢と同じ展開じゃないか?!
「なにが···かな?」
動揺を隠せないまま話の続きを促せば、愛聖は少し俺から体を離して俯いた。
『ここに···赤ちゃんが···』
「なんだ赤ちゃんか···って、赤ちゃん?!」
ウソだろ?!
「だ、だだだだだ···誰のっ?!」
『誰のって···それは···』
小「あ、間に合った!ごめん万理くん、急用が出来て出なきゃ行けなくなったからコーヒーは···って、愛聖さん?」
社長···絶妙なタイミングで現れるの、やめて下さい···
小「どうしたの?気分でも悪い?これから僕は車で出かけるから、寮まで送って行くよ?」
『お手数お掛けしますがお願いします···』
小「気にしないで?さ、行こうか。じゃあ万理くん、留守番頼むね?」
「···はい」
そこに佇んだまま、呆然としか···返事が出来なかった。