第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
『ちょっと···待って?どうして小鳥遊社長は、早々とこれを準備してたの?』
万「あ、それはね?」
「ま、待て万!それはダメだ!」
万「百く~ん、出番だよ?···千を押さえといて!」
百「アイアイサー!」
「こら、離せモモ!···離せって!」
あれをバラされたら、僕はどんな顔をしたらいいのか分からなくなるだろ!
『万理、千がどうかしたの?』
言うな、万!
万「あのね···ちょっと前にRe:valeがオフの時、ウチの社長の所に千が訪ねてきたんだよ。しかもちゃんとアポまで取って」
頼む···やめてくれ···
モモに力ずくで押さえられて動けず、なおかつ手のひらで口を覆われている僕は身動きも喋ることも許されず···
『千が?』
万「うん、そう。で、社長にお願いしてた」
『お願いって?』
やめろーっ!
万「千がね、社長室で正座して···絶対に幸せにするから、愛聖を僕に下さい···って。いやぁ、俺はビックリしたね。この千が、あんな風に正座までして人に頭を下げる日が見られるとは思ってなかったからね···」
百「ユキ···それ本当?!」
万の爆弾発言に驚いたモモが、漸く僕を解放する。
万「社長も暫くは黙って考え込んではいたけど、千がずっと頭を下げ続けてた熱心さに心を打たれて、娘同然の愛聖さんを宜しく頼むよ···って」
『千···それ本当なの?』
「···ノーコメント。って、わっ···!」
飛びつく勢いで愛聖が僕に抱きつき、胸に顔を埋める。
「また泣く···」
『千のせいだから』
「今日はそればっかりだな、愛聖は」
だけど、そんなお前が···僕は愛おしいんだ。
万「まったく···愛聖は昔は俺にばっかりそうやって抱きついてたって言うのに。なんだかちょっとジェラシー感じちゃうなぁ。千は昔から愛聖を泣かせばっかだったのにさ?わざと意地悪したりとかね」
百「それって、好きな子だから意地悪しちゃう的な、アレ?」
「違···············わ、ないことも、ないこともない···」
万が言う通り、愛聖は何かあるといつも万にくっついては甘えてた。
それがなんだか気に入らなくて、つい···意地悪をしては構って泣かせてた。
僕を、見て欲しくて。