第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
「万···ありがとう」
万「え、急になに?」
「僕を愛聖と出会わせてくれて···ありがとう」
万「ん?ごめん、よく聞き取れなかった。千、もう1回言ってみて?」
妙な笑顔で言う万理は、ぜったい···聞こえてるはずだ。
「もう言わない」
万「えぇ···千って意外とケチ···」
「なんとでも言えば?っていうか、起きたなら帰れよ。明日も仕事あるんだろ?···有能事務員」
ツンと横を向いて言い放てば、万はやれやれと言わんばかりに肩を竦めて見せた。
万「じゃあ、そろそろお邪魔虫は退散しますか、百くん?ほら、この後···俺んちで編集作業しよう」
「万、聞こえてるから」
万「あ、聞こえちゃってた?」
「わざと聞こえるように言ったんだろ···悪趣味」
万「そういうこと言ってると、愛聖に愛想つかされるからね?」
···。
万はすぐそうやって···いや、今はいいか。
帰り支度を終えた万とモモを玄関まで見送る。
万「千、分かってると思うけど···まだ授からせるなよ?」
『えっ?!ば、万理なに言ってるの?!』
恥ずかしがる愛聖をそっと抱き寄せ、万を見る。
「さぁね?···今夜はサンタがプレゼントを配る日だから···僕にもあるかもよ?」
『千?!』
百「ユキとマリーの子供が産まれたら···かわいいだろうなぁ···ね!産まれたらオレも抱っこしていい?!」
『まだ産まれないから!』
「そうね···これから作るんだから」
『やめてよもう···みんなして···』
真っ赤な顔を隠す愛聖をみんなで笑いながら、じゃあ···と静かにドアを閉めた。
いつか、僕に守る者が増えたら。
そう遠くない未来を思い描いて、これからもずっと隣にいる···小さな温もりを、また抱き寄せた。
~ END ~