第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
そっと愛聖から体を離し、視線だけでこっそりと部屋の方を見る。
···やられた。
薄く開けられた窓の隙間からは、怪しげに光る小さな赤いランプ。
それは見慣れたランプでもあり、よく見れば小さいながらもガンマイクが寄せられていた。
ガラッと勢いよく窓を開ければ、そこには蹲るように座るモモと万がいて。
「一応、確認しとく···なに、してるの?」
万「あ、ヤバ···ニ、ニャーん···ゴロゴロ···」
百「ズルいバンさん!···えっと、こ、これには深いワケが···アハハ···」
万からカメラを奪い取り、スイッチをオフにする。
万「いやぁ···ウチの社長がね···」
「小鳥遊社長が、なに?」
百「せっかくの大イベントだから、記念に撮影しときなさいって···ねぇ、バンさん?」
万「そうそう。いつかきっと使う日が来るだろうからって」
···なんに使うつもりだよ。
万「そ、そうそう!社長から2人にプレゼントを預かってるから、ほら!」
万が自分のカバンからガサゴソと封書を取り出して僕たちに差し出す。
中身はいったいなんなんだ?と眉を寄せながら取り出せば···そこには1枚の書類が入っていて。
「婚姻届···」
万「ただの書類じゃないよ?ほらよく見て···保証人のところ」
言われるままに目を落とせば、保証人の欄には確かに記名がされていて。
「小鳥遊音晴···八乙女宗助···なぜこの2人?」
万や、モモではなく。
僕と関わりのある、おかりんでも···なく。
万「千も知ってるように、愛聖の御両親は既に他界していて身寄りがない。こんな大事な書類に俺や百くんがノリで名前を書く訳にも行かないだろ?そうなると、いまいる世界での育ての親は···ウチの社長かな?って」
その社長こそ、ノリノリでカメラを回させてたじゃないのか?とも思ったけど、敢えてそこは黙って万の言葉の続きを待った。
万「で、もう1人の八乙女社長のだけど···ウチの社長の所に来る前までは、愛聖は八乙女プロダクションに所属してた。だからウチの社長が頼みに頼み込んで、八乙女社長にサインを貰ったんだよ」
百「凄いでしょ?!小鳥遊社長ってばさ!」
万「やる時はやる!それがウチの社長···小鳥遊音晴だよ」
なんで万が自慢気に胸を張るんだか···