第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
差し出された右手を下ろし、代わりにそっと左手を掴む。
『だってこっちは···その時の為に、のだよ?』
「いまがその時、だったら?」
そう告げれば、愛聖の体がピクリと小さく跳ねた。
『え···待って···じゃあ···これって本当に本当の···』
戸惑う愛聖に微笑みながら、リングを取り出し薬指に通す。
「愛聖。これから先の僕の未来を、お前にあげる。だから、ずっと隣で···笑っていて欲しい」
『千···』
ポロポロと大粒の涙が愛聖の頬を伝っては落ちて行く。
「もしかして、泣くほどイヤ?」
とめどなく零れていく涙を掬いながら言って、また、愛聖の顔を見つめれば、小さく首を振るばかりで。
「あぁ、そうだ。もうひとつ伝えなきゃいけない事があるんだ···それはね···」
言いながらもう片方のポケットからリングを取り出し、自分の左手の薬指に通して見せる。
「実は、僕とお揃い···だったりする」
『お揃い···って···』
「僕と一生お揃いなんて、イヤ?」
さっき愛聖から言われた言葉を並べ、リングが通された左手を掲げて見せる。
『イヤなわけ、ないじゃない···千、ありがとう···嬉しい···』
大げさなくらいに僕の体に抱き着く愛聖を抱き締め返しながら、ちゃんと受け取って貰えて僕も嬉しいよ···と囁いた。
「愛聖···泣き過ぎ」
『千のせいだから!』
「僕のせいなの?」
『もう···メイク崩れまくりだよ···』
「大丈夫。どんな顔してても、僕は愛聖を愛してるから」
『愛してるとか···』
零れ続ける涙を光らせながら、腕の中で愛聖が顔をあげる。
「今までも、これからも···何度だって言うよ。愛聖···愛してる···」
『千···私も愛し、』
愛聖の言葉の続きを飲み込むように、唇を重ねた。
星が瞬き、聖なる鐘のなる夜。
僕は神にも···サンタにも誓いを立てるよ。
愛聖···僕はお前を、生涯ずっと愛し続けるから。
百「ねぇバンさん···これいつまで続くのかな···ラブラブ過ぎてオレ飽きた」
万「シーッ!百くん···千にバレたら怒られるだろ」
·········ん?