第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
言われるままに屈んでやれば、目の前に迫る真剣な眼差しの愛聖の顔があって、堪らずあちこちにキスを落とす。
『ちょっと千?いたずらしないで···擽ったいよ』
「ムリ。ほら、早くしないと···会えなかった分もっとキスをするよ?」
『だから、擽ったいってば···』
身を捩りながら抵抗しつつも僕の首に腕を回す愛聖を支え、何度も何度もヒンヤリする肌に唇を付けては離す。
『出来た!千がイタズラするから時間掛かっちゃったし』
そう言って少し離れる愛聖の首元には、キラリ···淡いグリーンの光。
「これって···もしかして」
指で触れながら言って、愛聖の顔を覗けば···
『実は···ね。こっそりお揃いだったりして』
「お揃い···?」
『えっと···私とお揃いとか、イヤだった?』
「イヤなわけ···ないだろ」
お揃いなんて、そんなの···嬉しくて、泣きそうだよ。
さっきよりも一段と強く抱きしめ、息が止まるほどのキスをする。
互いに行き交う熱が夜風に舞って白く上がり、僕たちを包んだ。
「愛聖。僕も愛聖に、受け取って欲しい物があるんだ」
『私に?』
ポケットに手を入れて、ツリーから外した小さな飾り箱を愛聖の手に乗せてやる。
『これって···部屋のツリーの飾り、だよね?』
不思議そうな顔をする愛聖に、開けてみて?と促した。
悴む手で丁寧にに包みが開けられて行くのを、僕は黙って見守る。
やがてそれは姿を現して···愛聖が大きく瞬きを繰り返した。
『これって···もしかして···えっ···うそでしょ···』
「嘘じゃない。これが僕の、気持ち」
『だって今日は千の誕生日で、それからイブで···あとは、えっと···えっと···なんか嬉しくて爆発しそう···』
髪を触ったり、顔を隠したりしながら愛聖がポツリポツリといろんな言葉をこぼしていく。
「爆発されたら、困るんだけど?···貰ってくれる、かな?」
『もちろんだよ!···ね、千がつけてくれる?』
開いた箱を僕に委ね、なぜか右手を差し出してくる。
「テンパリ過ぎ。愛聖、僕がプレゼントしたいのは···こっちの指だよ」