第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
『あの日、駆け出した私を追い掛けて来たのは百ちゃんだってすぐに分かった』
「どうして?」
『だって千は絶対そんなことしないもの。去る者は追わず主義だから』
···そこに関しては、言い訳出来ない。
『それでそのまま送って貰った時、用事があって寮に来てた万理と会って···いろいろ話して、やっぱり私が悪いからすぐに電話して謝るって言ったんだけど···』
「万は、なんて?」
『今回は千から連絡が来るまで、絶対に私から連絡したらダメだって』
愛聖から連絡が来なかったのは、万が噛んでたのか。
まぁ···僕も、連絡はしなかったけど。
『どうして?って聞いたら、千なら絶対に大丈夫だからって笑うばっかりで。だから今日も、Re:valeの楽屋に挨拶に行った時、千となにも話せなかった。日付けが変わったら、千の誕生日なのにって思ってたけど···あ!そうだった···千にプレゼントがあるの』
話の途中で愛聖がゴソゴソと動き、ポケットから如何にもという包みを僕に差し出した。
『受け取って···貰える?』
「もちろん···いま開けてもいい?」
愛聖が嬉しそうに頷くのを見て、その包みをゆっくりと開いていく。
「これは···」
縦長の箱を開ければ、中からはトップに小さなグリーンタンザナイトがキラリと施されたネックレスが入っていた。
『12月の誕生石ってラピスラズリが多いけど、このグリーンのを見つけた時、千ならこれだ!って思ったんだよね。ほら、Re:valeの時のカラーリングって、千はそういった色の物が多いし···これなら普段から付けてても違和感ないかな?なんて···ダメかな?』
「ダメじゃない···一生外さないかもよ?」
『撮影の時、困るでしょうに』
「外さなきゃダメな撮影なら、そんな仕事しない」
『わがままだなぁ、千は。岡崎さんが泣くよ?』
「おかりんには、遠慮なく泣いて貰う」
あっさりと言えば、それがツボにハマったのか愛聖が肩を震わせて笑い出した。
「愛聖、せっかくだから···付けて?」
シャランと指で掬って揺らせば、愛聖は手のひらで受け取り僕へと手を伸ばす。
『千、ちょっとだけ屈める?身長差があって届かないから』
「いいよ」
体に巻き付けた腕を解いて、軽く髪をサイドに流す。