第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
なぜか自分の事務所のグループの歌を口ずさみながらキッチンで万がアレこれと料理を作っては、テーブルに並べ、あっという間に食べきれないほどのメニューが揃う。
4人でグラスを傾け、とは言っても愛聖はほとんどアルコールは口にしなかったけど。
食事をして、騒ぎ···これは主にモモだけどね。
ある程度の騒ぎが済んだところで、モモと万が順に寝落ちた。
『寝ちゃったね、ふたりとも』
「そうね···あれだけ飲んで騒いだら、こうなるのは至極当然」
ベッドルームから毛布を取って、床に転がるモモと万に掛けてやる。
『千も、眠いんじゃない?今日は仕事だったし』
「···そうね。でも僕には、まだやる事があるから」
愛聖の髪を撫でてから立ち上がり、ツリーから1つ···飾りを外してポケットにしまう。
「愛聖。酔い醒ましに少し、外に出よう」
窓を指差し、愛聖に手を差し伸べる。
『いいけど···寒いの苦手でしょ?』
「少しなら平気」
繋いだ手の暖かさを感じながら、静かに窓を開けてバルコニーへと出た。
「···寒い」
『だから言ったのに』
「でも、こうすれば···寒くない」
誰にも邪魔されず、愛聖を腕に閉じこめれば、夜風に遊ばれる愛聖の髪が、さらりと僕の頬を擽った。
「あの日。愛聖がイルミネーションを見に行きたいと言ってたけど、僕は行かないって言ったよね?···どうしてか分かる?」
『だからそれは、千が人混みがイヤなのと、それから···』
そう、僕はあの時···誰に何言われるか、どう書かれるか分からないから。
確かにそう言った。
「だけど、本当は···ほら、見て?ここから広がる光の世界」
僕たちの目の前には、ここでしか見れない街明かりの輝きが瞬いている。
『キレイ···』
「ここからの景色を、2人占めしたかったんだ。誰にも邪魔されない、僕と愛聖だけの···特別な時間」
『千···』
「あの日から連絡は来ないし、僕も出来なかったし。今夜はもう、一緒にこれを見ることは出来ないなって思ってたけど、万のお節介のお陰で見ることが出来て良かった」
『お節介とか、万理が怒るよ?』
クスリと笑いながら言う愛聖は、腕の中でクルリと向きを変えて僕を見上げる。