第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
「モモ、鍵を忘れ···万···」
万「どうも~、真心を運ぶ大神宅配便で~す!」
大きなケーキの箱をチラリと掲げる万に。
百「チキンもあるよーん!」
いかにもクリスマス仕様の包みを掲げる、モモ。
肉、僕は食べないの知ってるクセに。
···。
「新聞なら間に合ってるから···」
妙なテンションのふたりを見て、思わず開けかけたドアを閉めようとノブを引く。
百「わっ!待ってユキ、閉め出さないで!」
万「折笠さん、受け取りのサインをお願いしま~す!」
ニコニコと笑顔を崩さずに、わざとらしく僕の苗字で言う万に負けて仕方なく、またドアを薄く開く。
「ハァ···入れば?」
百「やった!今日はオールでユキのハピバとメリクリだね!」
万「百くん、その前に···ほら」
百「あっ···そうだった!···ユキ、オレとバンさんからのプレゼント!···受け取って!」
そう言ってモモが1歩下がり、万がその後ろに手を伸ばして···
「愛聖···」
万が手を引いて僕の前に連れて来たのは、間違いなく愛聖で···
百「ユキには何よりも最高のプレゼントでしょ?···ね、バンさん?」
万「そうだね。千がいま1番欲しくて、だけど···カッコつけの千が追いかけられなかった大事なものだね、百くん?」
このふたりは···
万「とりあえず···タイムリミットは3分。それ以上は俺と百くんが凍死するから待てない。じゃ、ごゆっくり?」
『え、あ、万理···ちょっ』
万がグイッと愛聖の背中を押して玄関に入れドアをパタリと閉めてしまう。
万「3分だからね~?」
···そのまま帰れよ。
心で悪態をつきながら、ドアをジッと見つめる。
『千···ごめんね。私、千が人混みが苦手なの分かってたのに···』
瞳を潤ませながら愛聖が僕を見上げる。
「いいよ、僕も大人気なかったのは確かだし。それに···謝るなら僕の方だから。ごめんね、愛聖···」
指先で愛聖の目元を拭い、戸惑いながらもその小さな体を抱き寄せる。
もう、寂しい思いなんてさせないから。
小さな温もりを確かめるように、強く、強く抱きしめる。
百「バンさん···オレ、寒い···」
万「アハハ···でも我慢。千~、あと1分だぞ~」