第5章 聖なる夜に、愛が降る ( 千 生誕 )
あの夜から1週間経ち、仲直りなんてできることもないままに、とうとう明日は24日だという日まで来てしまった。
当然の様に愛聖からは連絡はないし、僕からも特に連絡なんてしなかった。
お互いの仕事の都合で局で顔は合わせる事はあって、マネージャ代理として同行する万と一緒に楽屋挨拶に来る愛聖の姿だけは何度か見た。
さすがに万も僕たちの状態が変だと気付いたのか、それともモモから聞いたのか、愛聖が仕事をしてる時間に万がRe:valeの楽屋へとやって来た。
万「千、いい加減に機嫌直したら?お前だって、このままじゃイヤだと思ってるんだろ?」
昔と変わらない言い方で、万が僕に声を掛ける。
万「お前の事だから、自分が必死になるとか、そういうのカッコ悪いとか思ってるんだろ?でも、それは大きな間違いだからな?」
「うるさい···ほっといて」
万「ほっとけないから、こうしてここに来たんだろって···千の事はどうでもいいけど、俺は愛聖が心配なんだよ」
「じゃあ、万が愛聖とずっと一緒にいてやればいい。昔からそうだっただろ?···そう、昔から、ね」
昔から何かあれば、いつも愛聖の側には万がいた。
それは昔も今も、変わってない。
万「あ、そう?そういうこと言っちゃう?ふ~ん···じゃあ、千がこの前ウチの社長にお願いしに来たのは俺の見間違いだったって事か?」
···そう来たか。
百「え?ユキがマリーの事務所の社長に?なんで??」
「僕は知らない。万の見間違いか···別人でしょ」
ポーカーフェイスを装って言えば、そんな僕に眉を寄せながら腕を組んだ。
万「千、この際だから言っとくけど···俺は愛聖を千に譲ったわけじゃないからな?愛聖が千といる方が幸せそうだから、お前の背中を押したんだ」
「別に、そんなの頼んだ覚えはないし」
百「ユキ!」
万「そっか、分かった。じゃあ、明日は俺が愛聖を誘っても···千は文句ないんだな?」
万が···愛聖を?
「勝手に、」
万「掻っ攫うつもりで誘うからな?」
僕の言葉を断ち切るように言って、万は部屋から出て行った。
百「ユキ···ユキはホントにそれでいいの?」
心配そうに言うモモに1度だけ視線を投げて目を伏せた。