第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
さてと、社長はどこかな?
って言っても、ここにいないなら社長室しかないんだけどね。
アイドリッシュセブンや愛聖のスケジュールの担当を早めに決めておかなきゃだし、とりあえず社長室に行ってみるかな?
手早く荷物を片付けて、社長室へと向かう。
まだ誰もいない早めの時間の廊下は、足音もいつもより大きく聞こえる気がして、なんとなく歩幅を狭めた。
社長室の近くまで来るとドアがちゃんと閉まりきってなくて、中から人の話し声が漏れていた。
電話中、かな?
もしそうなら出直した方がいいかも知れないな。
そう思いながら、失礼だとは思いながらも中をそっと覗く。
『すみません···本当は分かった時点で社長には相談するべきだったとは思います。でも···どうしても、言えなくて』
あれ、愛聖?
小「そこに関しては責めるつもりはないよ。むしろ、正直に話してくれてありがとう。ただ···この件に関しては今後のキミの活動にも関わってくるから、その辺は体調を見ながら相談して決めていこう」
『···はい』
愛聖の今後の活動?
体調を見ながらって···どこか悪いのか?
小「それと確認しておきたいんだけど、こういった事はキミひとりでそうなった訳じゃない···相手には?」
『いえ···まだ何も話していません』
小「それなら早く相手にも話さなければならないよ?もし不安だったら僕も同席してもいいけど···どう?」
いったい愛聖に何が起きてるんだ?
『大丈夫です。ちゃんと自分で言いますから』
小「そっか···困った事があったら何でも僕に話してね?力不足かも知れないけど、出来るだけ協力するから···あ、それと···ちなみにその相手って言うのは僕も知ってる人かな?」
『あ············はい』
小「わかった。とりあえず今日は予定がないから、寮に戻って休んでなさい···いいね?」
『すみませんでした』
小「さ、今朝はこれから万理くんと打ち合わせがあって、彼ももうすぐ来るだろうからキミは普段通りにしていなさい」
『分かりました···失礼します』
あ、やば。
立ち聞きしてたなんてふたりに知られたら大変だ。
サッと早足で近くの給湯室へと体を滑り込ませ、愛聖が社長室から出ていく様子を見守った。