第4章 一織には負けねーからな!! ( 和泉 三月 )
ん~···これでいいかなぁ?
あとひと煮立ちっという所まで火にかけたお粥を見て蓋を閉じる。
あれから暫くして一織が “ また ” 愛聖を抱きかかえて帰ってきた。
思ったより時間が掛かったなと聞けば、そこは万理さんが苦笑いをしながら···
万「向こうに着いてからも随分抵抗してね···一織君が説得に説得を重ねて、点滴して来たんだよ」
向こうでもダダこねたのか。
薬が聞いてるのか、今はまだ眠ってるっていうからすぐには食えないしな。
目が覚めるのを待つって言っても、一晩中起きてるわけにはいかねぇし、どうしたもんだかなぁ。
ちょっとだけ、様子見に行ってみっか?
そう思ってエプロンを外した所に、一織が入ってくる。
一「あぁ、兄さん。ちょうどいい所に」
「あ?なんだ?」
一「佐伯さんが目を覚ましましたよ。なので、ここから先のことは兄さんにお任せします。食事と飲み物を運んであげて下さい」
なんだ?
「一織、お前がついてるから平気だって万理さんから聞いたけど···リタイアか?」
一「違います。私はその、充分に役目を果たしましたから、あとは兄さんが···いえ、兄さんの方が適役かと思います」
「意味分かんねぇけど、まぁ···一織がそう言うなら行ってくるよ」
再度お粥を火にかけてる間に、常温の飲み物を用意する。
一「あ、そうだ···気をつけてください。今の佐伯さんは危険です···可愛すぎます」
「は?」
最後の方、オレの聞き間違いか?
何となく眉を寄せると、一織は頼みましたよと念を押して自分の部屋に戻って行った。
「変な一織···」
ポツリと呟いて、愛聖の部屋へと向かった。
「入るぞ~?」
軽くノックをしてドアを開けると、ベッドから起き上がってボンヤリとする愛聖が見えた。
「起き上がって大丈夫か?一織に言われてお粥持って来たけど···食えそうか?」
近くに行って、サイドテーブルに膳を置く。
「ちょっとゴメンな?」
ボンヤリしたままの愛聖のおでこを触れば、まだ熱い気もする。
体温計を渡して計らせれば、その数字は37.8。
まだまだ危ういなぁ。
いま下がってんのは薬が効いてるからだろうし。
『三月さん···』
「ん?」
『心配かけてごめんなさい』