第3章 お兄さんこういうの苦手なんだよ ( 二階堂 大和 )
千が愛聖を抱き上げ、ベッドへと運ぶ。
「···私はもう、汚れてるから」
「汚れてなんかない···言っただろ?オレにはお前が必要だって」
「でも···」
「もう···黙れよ」
横たわる愛聖の首すじに顔を埋めた千の、リップ音が聞こえて来て···
「ん···」
その場でキズ付いた体を優しく抱いて行く。
ここにいるスタッフを含めた誰もが、その圧倒される演技に飲まれそうになる。
モニターを見れば、うっすらと涙を浮かべた千と愛聖の顔がズームアップされて、お互いにキズ付きながらも愛し合う恋人同士が映し出されていた。
ー カーット!!···オッケー!! ー
「「 おぉっ··· 」」
監督の合図で、拍手さえ沸き起こった。
「スゲーな、愛聖」
万「だろ?千がさっき、飲まれないよう必死って言ってた意味がわかった?だからさ、大和くんも遠慮なく愛聖に乱暴しちゃって大丈夫だから」
だから言い方···
『万理~!一回でオッケー貰っちゃった!やったね!』
さっきまでとは全然違う顔で駆け寄る愛聖に、万理さんも笑顔で良かったね!と返す。
千「一回でオッケーとか。ちょっと残念」
万「何でだよ?ワンテイクで終わるなら、その方が楽だろ?」
···どーもすんません。
千「それはそうかもだけど。僕も大和くんみたいに何度も愛聖を抱きたいな?とか」
「嫌味か!!赤いリップあちこちに付けたままで言われても何ともねぇけどな!」
千「そういう大和くんだって、同じの付いてるままだけど?」
『ホントだ!二人とも私のルージュが移っちゃってる!···何ともないのは万理だけだね』
万「オレは俳優でもなんでもない、ただのマネージャー代理だからね」
爽やかに笑う万理さんを見て、愛聖が何か企んだような笑みを浮かべる。
『ね、万理···目になんか入っちゃったみたい。ゴロゴロする···ちょっと見てくれる?』
片目を押さえて顔を上げる愛聖を見て、万理さんが慌てて顔を近付けた、その時。
チュッ···と音を響かせ、愛聖が唇を寄せた。
『スキあり!これで万理もみんなとお揃いだね!』
万「やられた···愛聖、イタズラするなよ···」