第3章 お兄さんこういうの苦手なんだよ ( 二階堂 大和 )
千「それより大和くん?君は少し休憩になるみたいだよ?」
「は?休憩···って」
「二階堂さん、すみません!Re:valeのスケジュールの都合で先に千さんの方を撮らせて頂きますので、楽屋でお休みください」
···なんだ、これ。
なんの嫌がらせだ、おい。
千「だ、そうです。それとも、勉強の為に僕の撮影でも見学してく?」
ムーカーツークー!!
「あぁいいぜ。そうさせて貰うわ」
クイッと眼鏡を押し上げながら、ピクつくこめかみを隠す。
千「言っとくけど、演技凄いよ?」
「うっさいわ!誰がアンタの演技を参考にするか!」
千「違うよ、凄いのは···愛聖の方。僕は毎回飲まれないように必死。ま、見てなよ彼女の芝居をさ」
スタンバイオッケーです!とスタッフから声をかけられ、千と···支度が終わった愛聖がセットの中に入った。
万「大和くん、頑張れ?」
「分かってますって。頑張りますよ···ハァ」
万「愛聖を参考にするといいよ、あの豹変ぶりとかね。さっきまで大和君に乱暴されかけてたのに、今度は恋人役の千とのシーンだから」
オレに乱暴されかけてたとか、万理さん言い方な···
「どうして···こんな···」
さっきまでオレがいた場所に立つ千が、オレに無理やり乱暴された形跡を纏った愛聖を抱き起こす。
「オレの···せいで」
潤む瞳で黙って千に首を振って見せる愛聖···
その白い肌には、いくつものシルシが刻まれていて。
それに気付いた千が悲しさと、愛する者を巻き込んてしまった事に後悔の顔を見せる。
「私は···平気···だからもう、私を···捨てて行って···」
!!
やばい、今の愛聖の表情ゾクッと来た···
芝居だって分かってるのに、なんだこの感じ。
目の前で続けられる千と愛聖のシーンに、思わず息を飲む。
「そんなこと、出来る訳がない!」
声を荒らげて愛聖の体を強く抱きしめる、千。
「だって、もう私は···一緒にいられないよ···こんな、汚されて···だから、このまま捨てて行って···?」
「どんな姿になろうと、オレにはお前が···必要なんだ···」
見つめ合う二人。
その距離はやがて縮んで行き···愛する者同士の口付けが交わされて···