第3章 お兄さんこういうの苦手なんだよ ( 二階堂 大和 )
缶ビールを持ったままボンヤリと考え事をするオレに、半ば呆れたように愛聖が声をかけた。
『もしかして明日は撮影があるのに酔っ払い状態ですか?』
「い~や?どっちかってーと、ほぼシラフ。で、ゴメン、何の話しだっけ?」
もぅ!と言って愛聖はもう一度同じ話をしてくれる。
『なので、明日一回で決められるように本読みくらい合わせておきますか?って言ったんです』
あ~···本読みねぇ···
「別にいらないよ、台本と流れはだいたい頭に入ってるから。あとは明日現場に行ってから復習するだけ」
現場に長居はしたくない。
そんな考えから、キッチリと流れやセリフは頭に叩き込んだ。
NG連発して現場に長居なんてしたら···
『じゃあ、千が現場入りする前に終わっちゃうかもですね』
そう、その千こそが面倒で会いたくない。
何かとオレを見つければ先輩命令だとか言って絡んでくるし。
『私は二階堂さんとのシーンの後に、そのまま千とのシーンもあるからハードだなぁって思ってたけど、それなら助かります』
「オレとシーンの後に立て続けに千さんとか···抱かれ過ぎでしょ」
『二階堂さん、言い方!』
ハハハッと笑い飛ばして、それじゃ···とぐうたらしてた体をソファーから起こす。
「本読み付き合いますかね、明日の愛聖の抱かれ過ぎ防止の為に」
『だから、言い方···』
······と、昨夜のここまでは良かったんだけどな。
ー オレはアイツに復習がしたいんだ···だからアンタには犠牲になって貰う。アンタをキズつけるのが、一番アイツには堪えるだろうからな ー
ー や···やめて···来ないで! ー
薄く笑いを浮かべながら、ジリジリと詰め寄るオレ。
怯えながら後ろに下がり、やがてその背中が壁に阻まれ逃げ場を失う愛聖。
ー せいぜいイイ声で哭いてくれよ?オレは楽しみたいんだから、さ? ー
ー い、いやぁぁぁぁぁ!! ー
腕を伸ばし愛聖を掴み寄せ、無理やり口付けをする。
まぁもちろん、真剣な芝居だし、フリではなくホントに···だけど。
ー やめて!私に触らないで! ー
オレを殴る為の愛聖の手を避けて、そのまま掴み押し倒す。
ー 言っただろ!アンタに拒否権はないんだよ!! ー