第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
社長にバレたらからかわれるかな?なんて思いながら愛聖の名前を自分の苗字に置き換えて宿帳に書いた。
記帳しながら自分の名前の横に連なる、俺と同じ苗字の···愛聖の名前。
なんだか新婚さんみたいだな、なんて思ったら···ちょっと恥ずかしかったけど。
平静を装って受付を済ませた事を思い出す。
愛聖には、佐伯 愛聖 なんて書けないだろ?と言いながらも、本当は···いつかそれが当たり前の様になったらいいのに、なんて思ったりして。
『社長に知られたら、暫くネタにされちゃうよ?』
「じゃあ···ネタにされないように、既成事実でも作っちゃう?」
『な、急になに言ってるの?!』
「愛聖、声が大きいって」
顔を真っ赤にして叫ぶ愛聖の口を手のひらで覆う。
『ごめん···だって万理が変なこと言うから』
「俺は···そうなってもいいかな?なんて思ってるけど?」
だって、ずっと前から愛聖を知ってて。
少しずつ変わっていく愛聖を見て来て。
これからも一緒にいたいと···思ってるから。
「あのさ、愛聖。いまのこの時間を、俺の誕生日に巻き戻してもいい?」
『万理の誕生日に?いいけど、どうして?』
「その日に戻って、日頃から真面目にお仕事してる頑張り屋さんの俺に、愛聖からプレゼントを貰おうかと思って」
『万理、自分でなに言ってるか分かってる?もしかして···夕飯で出されたお酒で酔ってるの?』
微妙な顔で俺を見る愛聖を連れて、近くにあったベンチに促す。
「はい、ここ座って?···あぁ、違うって。愛聖が座るのは、ここ」
トンっと俺の足を叩けば、そんな恥ずかしいこと出来るわけないでしょ!とさっきよりも顔を赤くした。
「だってほら、時間を巻き戻したから今日は俺の誕生日。誕生日の人は、王様だから」
『意味分かんないよ』
「は・や・く?誰も見てないし、平気平気」
繋がれたままの手を引けば、抵抗することを諦めたのか愛聖は言われるままに腰を落とした。
『これが、プレゼントでいいの?』
「そんな訳ない。じゃあ、問題です···俺がいま、1番愛聖にして貰いたい事はなんでしょう?」