第12章 いつか届くといいな・・・ ( 七瀬 陸 )
「あの・・・催眠術師に協力をって言ってしましたけど、千さんも大和さんも術にはかけられてないって事ですか?でも千さんはお肉食べてたし、それに大和さんだって」
愛聖さんを追いかけ回して抱きしめてたりとかしてたし。
千「あぁ、それなら全部ドッキリだよ」
大「そうそう。それにオレたちはアイドルでもありながら・・・」
「「 俳優業もやってますから 」」
不敵な笑みを浮かべて声を揃えてそう言われて、じゃあお肉食べたりしてたのも演技だったの?!と返す。
百「スタジオでいったん解散して楽屋戻った時、ユキは超グロッキーになってたんだよね」
千「そうね・・・思い出すだけでも胃に不快感が起きるよ」
千さんはオレをドッキリに仕掛ける為に体張るとか・・・さすがです。
環「ゆきりんはそうかもだけど、ヤマさんのあれはいつもと変わんなかったよな?だってヤマさんは、いつもあんな風にマリーを追っかけて抱きしめたりしてっし」
大「こらタマ!お兄さんをそんな変質者みたいな言い方しないの!誤解されるだろ」
環「違うの?」
大「違うっての!」
千「へぇ・・・大和くんも愛聖を、ねぇ」
大「も、ってなんだよ!」
複雑な気持ちのオレを他所に、わちゃわちゃとした会話が飛び交う。
全部、ウソ・・・だったのか。
もし本当に愛聖さんの催眠術が解けなかったら、オレはずっとずっと一緒にいる覚悟までしてたのに。
それが例え催眠術のせいでオレの事を好きでいたとしても。
オレが愛聖さんを好きなら、大丈夫だって・・・そう思って。
『七瀬さん、ちょっといいですか?』
楽しそうに騒ぐみんなを見ながらも黙り込むオレに、愛聖さんから声をかけられる。
『少し、風に当たりに外へ出ませんか?あ、もちろん七瀬さんはもう1枚上着を用意してからですよ?』
みんなには内緒で抜け出しましょうと言われ、2人でそっと寮の中庭へと移動する。
「愛聖さんも、女優だったんだよなぁ・・・すっかり騙されちゃった」
ベンチに座りながら言えば、愛聖さんは申し訳なさそうな顔を見せた。