第12章 いつか届くといいな・・・ ( 七瀬 陸 )
周りのそんな言葉に耳を傾けているうちに、術師がパチンと指を鳴らして施術の終わりを告げる。
「さぁ、もう目を開けていいですよ」
俯きがちだった愛聖さんが目を開き、ゆっくりと顔を上げていく中で大和さんたちが我先に視界に入ろうとポジション取りを始める。
千「ほら愛聖、僕を見て?」
百「だぁーっ!ユキそれはズルいよ!」
環「マリー!俺!俺見て!」
大「こらタマ!お兄さんの前に横入りするんじゃない!」
我先にとお互いがお互いに割り込むように騒ぎ出すのを見てられなくて、思わずオレは愛聖さんの前に入り込み、その頭を隠すように胸へと押し当てた。
「みんな落ち着いてよ!いくらなんでも、そんなに取り合いっこしたら愛聖さんだって困るだろ!ね、そうだよね愛聖さん!」
『・・・七、瀬さん・・・』
自分の意見に同意が欲しくて、つい、腕の中の愛聖さんの顔を覗いてしまう。
「あ・・・しまった・・・」
ちゃんと分かってたハズなのに、なんでオレ、愛聖さんと視線を合わせちゃったんだろう・・・
千「・・・やられたな、大和くん」
大「だな・・・」
一「空気が読めない七瀬さんだけに、なんだか笑いしか起きませんね」
空気読めなかったのは確かにオレだけど、なんか一織酷くない?!
『七瀬さん・・・私・・・』
「えっ?!?!」
ちょ、えぇっ?!
『七瀬さんとずっと一緒にいたい・・・です』
ほわりと漂う甘い香りと同時に、愛聖さんの腕がオレに伸ばされて・・・
「えぇっ?!ちょっ、あっ、愛聖さん?!」
驚いているうちに、愛聖さんに抱きしめられた。
下「バッチリかかっちゃって、催眠術は大成功!って感じですねぇ!それにしても、ちょっと羨ましいというか?」
ニコニコと笑顔を浮かべながらいう下岡さんに、大成功なら早く術を解いて下さい!とアタフタしながら訴えれば、勿体ないなぁ・・・なんて言いながらも術師の人を促してくれる。
けど!
「あれ・・・いや、そんなはずは・・・」
催眠術を解こうと術師の人がそれを試みるも、一向に元に戻る気配はない。
「困りましたね・・・術が解けない。今までこんな事はなかったんですが・・・」
催眠術が解けないって、まさか・・・