第12章 いつか届くといいな・・・ ( 七瀬 陸 )
収録が始まるからとスタジオ入りして、いつもと違う雰囲気にスタジオを何度も見回す。
一「そんなにキョロキョロして、どうしたんですか?」
「う~ん・・・今日って収録なのにお客さん入れない収録なんだなぁって。ほら、いつもならオレたちが来た時にはお客さんはもう待機してるじゃん?」
そう言えば、いつものスタジオとも違うよね?と加えて言えば、一織は今更なにを言ってるんです?と冷ややかにオレを見た。
一「今日のスペシャルゲストの催眠術師の方は、それはとても凄い人だそうで、うっかりお客さんにもかかってしまったら困るからという番組側の配慮ですと説明されたのを忘れたんですか?」
「あ・・・打ち合わせの時にそんなこと言ってたかも・・・」
一織に言われて、今回の番組は特別企画だからってプロデューサーから説明された事を思い出す。
一「あの四葉さんでさえ、ちゃんと聞いてたんですからしっかりして下さいよ」
ふぅ・・・とため息を吐きながら、一織がひな壇へと歩いて行く。
うっかりお客さんにとか、どれだけ凄いんだろ・・・その人。
もしかしてオレたちの誰かがそうなっちゃったりしたら・・・なんて言ったら、一織に怒られるんだろうな。
っていうか、パーフェクト高校生とか言われる一織が催眠術にかけられたら、一織はどうするんだろ?
なんておかしな心配なんか関係なく収録が進み、番宣で来た愛聖さんが紹介されて、その後Re:valeも同じように番宣しに来て、オレたちの前に用意された特別仕様の豪華なゲスト席に座った。
下「さぁて、今日は他にもスペシャルゲストが来てるのをみんなも知ってるよね~?さっそくお呼びしましょう!どうぞ~!」
下岡さんに呼ばれた催眠術師が優雅に歩いて来て、下岡さんの隣りに立てば、スタッフがその人の経歴が書かれたボードを運んで来て、下岡さんが少しずつ紹介してはオレたちにも分かりやすく説明までしてくれた。
下「っと、ここまでの経歴だけでもドキドキしちゃうよね~!みんなはなにか質問とかある?聞くなら今がチャンスだよ~?」
どう?なにかない?!と笑う下岡さんに、百さんがいち早く手を挙げる。
百「はい!その催眠術って、嫌いなものとか食べれるようになったりしちゃう感じ?!」
「そうですね・・・それを口にする事によって体に害がないものであれば、ですが」