第11章 A little more to love (大神万理 )
愛聖に促されドアの前に立つも、イヤな予感が横切った。
『開けないの?』
「開けなくてもいいんじゃないかな?って」
ドア越しにも分かる気配、これは絶対・・・千がいる。
いつまでもドアを開けない俺を見て、愛聖がしょうがないなぁと小さく笑って呆気なくそのドアを開けられてしまう。
千「僕たちみんなのサプライズ、喜んでくれた?」
百「バンさんがなかなかドアを開けてくれないからら百ちゃん待ちくたびれちゃった!」
やっぱりいたのか、Re:vale。
あからさまなため息を吐けば、千や百くんの後ろからぞろぞろとなだれ込むようにして料理を運び込むウチのスタッフたちがいる。
千「お呼ばれしてるのに手ぶらじゃ失礼だと思って、いろいろと用意したからみんなで食べよう」
環「ゆきりんサイコーじゃん!王様プリンも超いっぱいある!もう食ってもいい?!」
千「もちろんだよ。まだまだたくさん届くから、お腹いっぱい食べていいよ」
なんだかもう、誕生日云々ってよりも・・・だな。
けど、みんなが楽しそうなら、まぁ・・・いいか?
千「ところで、万。ひとつだけ忠告しとくよ」
楽しそうに騒ぎ出すみんなを見ていると、隣に立った千がそう言って壁に寄りかかる。
「忠告?」
千「いつまでも保護者目線のままでいると、誰かにかっ攫われるよってこと。それに今回、予行練習くらいにはなったんじゃない?」
「・・・なんの話だよ。それに誰かって、誰?」
千「そうね・・・例えば、僕とか?万は隠してるつもりかも知れないけど、僕には分かるよ。どれだけ大事に見守り続けているのか。それに、そんな日を待ってるかもよ?」
フフッ、と意味深な微笑みを残して千は愛聖の所へ行ってしまう。
複雑な気持ちでテレビ画面を見れば、繰り返し流れ続けるあの時の映像。
あの日、あの時の、小さな誓い。
「ふたりだけのナイトウエディング、ね」
いつか、そんな日が来たら・・・その時はちゃんと、星空の下で誓うから。
最も、俺の手を取ってくれたらの話だけど・・・と、小さな後ろ姿を見つめれば。
『あ、万理!どうしよう!』
不意に振り返った愛聖が俺の名前を呼びながら手招きをする。
「どうしようって、何が?」
『紙コップ足りないんだけど、どこにあるんだっけ?』