第11章 A little more to love (大神万理 )
「あぁ、それなら倉庫に、」
そこまで言いかけて、そっと手を伸ばす。
「一緒に取りに行こう。紙皿だって割り箸だって必要でしょ」
『だね、私も一緒に行くよ』
伸ばした手に重ねられる小さな手に、かつての自分たちの姿を重ね合わせてしまう。
出会った頃はまだ子供だった愛聖。
その頃はただ、そんな子供が可愛い妹のように見えていたのに。
今は少し、いや、随分と気持ちに変化が出来た。
小さな愛情から、少しずつ大きな愛へ。
それはまだ、本当の愛までは遠いかもだけど。
いつかきっと、たどり着けると信じて。
「寄り道なんてしないから、ちゃんと・・・着いて来てくれる?」
言葉に隠した気持ちを、今はまだ気付いてくれなくてもいい。
そう遠くない未来で、懐かしく笑って話せる日が来るのを楽しみに待つことにするから。
環「バンちゃん、紙コップ早くー!」
「はいはーい、ちょっと待ってて?・・・行こうか、倉庫」
繋いたままの手を引いて倉庫へ続く通路を歩き出す。
『あ、ねぇ万理。さっきの話だけど・・・』
「うん?」
不意に足を止めた愛聖に振り返る。
『寄り道も、回り道もしていいから・・・その時は私も、連れてってくれる?』
「え?それって、つまり・・・」
ちょいちょいとされる手に招かれて少し屈めば、唇に一瞬だけ重ねられる柔らかな感触。
『つまり・・・そういうこと、かな』
「マジか・・・?」
『・・・内緒。さぁてと、紙コップどこかなぁ?早く行こうよ?』
照れを隠して軽やかに歩き出す愛聖のスカートが、ヒラリと揺れる。
それでも離れる事がない手を見て、窓から見える青空を見上げる。
神様?
小鳥遊プロダクション有能事務員、大神万理の目指す愛は・・・
意外と近くまで来てるようです。
~ END ~