第11章 A little more to love (大神万理 )
百くんのは、他の男と結婚しそうな愛聖を直前で攫って雨の中を手を繋いで駆け抜ける・・・まるで映画のワンシーンのようなシュチュエーションだったよなぁ。
びしょ濡れになった2人がお互いを見て笑って、百くんが抱き締めた愛聖の耳元で囁いて愛聖がひと粒の涙を流し、次のシーンでは幸せそうに向かい合う挙式シーンへと繋がってる。
そう言えば千のも百くんのも、前もって女の子が憧れるシュチュエーションをアンケート集計したやつだって監督から聞いたけど。
俺の場合って、急な話だったし、それこそ急な出演だったから・・・特に指示されるようなものは何もなかったよな?
あの日の事を思い出していると、曲調が変わりまた違う映像が・・・って、このカット割り俺のじゃないか!!
「ス、ストーップ!大和くんお願い!本当にやめて?!みんなも見ちゃダメだからー!」
大「いやぁ、そう言われると見たくなるのが人の心理ってやつよ?」
眼鏡をキラリと輝かせて笑う大和くんは、それはもう・・・楽しそうに俺を見る。
陸「ウエディングパレスのCMなのに、ランドセル背負った女の子が出て来た」
環「ホントだ。でも、なんかどっかで見たことあるような?
一「そう言われると、どことなく佐伯さんを子供に戻したような雰囲気ですね」
え・・・愛聖を子供に?
大和くんの肩越しに画面を見れば、そこには本当にランドセル姿の女の子が誰かに手を振って駆け出す場面があった。
ー どんな時でも、いつもそばで見守ってくれた ー
ナレーション、これ愛聖の声だよな?
ー 嬉しい時も、悲しい時も。そして、寂しい時も・・・ いつも寄り添ってくれた、私の大好きな人 ー
愛聖のナレーションに沿って、画面の中の女の子が少しづつ大人へと成長して、それはウエディングドレス姿の愛聖へと変わっていく。
ー そんな大好きな人と・・・私は今日・・・ ー
あ、なんかヤバい・・・気がする。
流れていくストーリーは、あの時のパレスのドアをキラキラと煌めかせながら開き、その光の先には・・・
「「 おぉっ!!出た!! 」」
ゆっくりと振り向く・・・・・・・・・俺がいた。