第11章 A little more to love (大神万理 )
『はい!小鳥遊プロダクション所属女優の、可愛い演技力!・・・です!なんちゃって』
やってる事は全然可愛くないよ。
「全く、いたいけな一般人を騙すとか・・・泣くぞ俺」
はぁ・・・と大きくため息を吐けば、監督がニコニコして機材のスイッチを押した。
ー あの時の千みたいに上手に作った折り紙の花ではないけど、今はこれに・・・誓うよ ー
「脚本より、ドラマティックだったね大神くん」
「勘弁して下さいよ、監督まで。本当に・・・」
ガックリと項垂れる俺を見て、周りのスタッフが楽しそうに笑う。
「まぁ、アレだ。今のは素材として使わせて貰うよ。あとはナイトウエディング用のポスター写真を撮ったらアップだ・・・もうひと頑張り頼むよ?」
「・・・はい」
まだ撮るのか・・・と内心グッタリしながらも、ここまで来たらなるようになれと思って立ち上がる。
小「万理くん、やっぱり僕の所でデビューしちゃわない?」
ウキウキした社長が俺の肩をポンッと叩く。
「それはお断りします。俺はやっぱり、裏方業務の方が楽しいですから」
小「それは残念。でも、モデル仕事とかしたくなったら」
「ありえません」
小「じゃあ、ナギくんが忙し過ぎる時の代理とか」
「やりませんよ」
小「う~ん、実は大和くんのスケジュールが、」
「社長?」
小「冗談だって、万理くん。だからそんな怖い顔しないで?ほら、スマイルスマイル!」
社長のそれは、時々そうは聞こえないんですよと言えば、ゴメンゴメンとまた社長が笑う。
小「さぁ、あともうひと頑張りしておいで?僕もちゃんと、見守っててあげるから」
ね?と穏やかに微笑まれてしまえば、本当はもう帰りたいだなんて言える訳もなく。
「大神さーん!こちらにお願いしまーす!」
「・・・行ってきます、社長」
小「うん、頑張るんだよ~?」
スタッフに呼ばれて歩き出した俺を、社長は大きく手を振りながら見送ってくれた。
頑張れ・・・俺・・・