第11章 A little more to love (大神万理 )
いたずらに微笑む愛聖の瞳に、小さく小さく俺が映って。
それが心の奥の奥を擽って、胸が早鐘を鳴らし始める。
ここには今、愛聖と俺のふたりだけ。
大人になったと言っても、まだどこかあどけなさが残る愛聖の瞳が、俺をまっすぐに見つめている。
「愛聖・・・」
震え出しそうな指先で愛聖の頬を撫で、そのまま顔を寄せて、そして・・・お互いに目を閉じた。
『あれ・・・おでこ?』
「・・・ごめん。それが限界。本番はなんとか頑張るからさ・・・ハハッ・・・」
本番はその唇に、なんだよな・・・ちゃんと出来るかな、俺。
『ね、万理?今の聞いてた?』
「あ、ゴメン、なに?」
この後のことを考えていて愛聖の話聞いてなかっ・・・・・・嘘、だろ・・・?
『万理からのキスの、お返しね?』
フフッと笑った愛聖が楽しそうに俺に抱き着くのを支えながら、まだ自分に起きた事態を飲み込めずに驚く。
「お返しって・・・えぇ・・・?!」
瞼に、とか・・・えぇっ?!
あっという間に熱くなる顔を愛聖の肩口に押し当てるように隠して、それでも止まらない照れに俯いた。
「何やらかしてくれてんだよ愛聖・・・」
『万理、耳まで真っ赤だけど?』
「・・・・・・・・・見るな」
『でも、怪我の功名ですかね』
「なに意味分かんないこと言ってるんだよ」
肩口に顔を押し付けたままモゴモゴと言えば、愛聖とは違う香りが風に乗って香り立つ。
千「へぇ・・・万もそんな顔することあるんだ?」
・・・千?!
百「バンさん!監督がいいモノ撮れたって喜んでるよ!」
百くんまで・・・いや、今なんて?!
「撮れたってまさか・・・」
『えへへ、ゴメンね万理。そのまさか』
やられた・・・!!
千「言っとくけど、これは愛聖が言い出しっぺだから」
百「そうそう!マリーがカメラが近くになかったら万理も緊張しないんじゃないか?って言って、あっちと、それからこっちのカメラを遠隔して撮ってた」
あっちと・・・こっち、って・・・
百くんが指差す方向を見れば、確かにRECランプが光るカメラが設置されている。
「じゃあ・・・今のは全部、愛聖の・・・?」