第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
❁❁❁ 愛聖 ❁❁❁
万理の誕生日から、数日後。
社長が言っていた通り、万理も私も休暇を貰い···全て社長によって手配された取材という名目の温泉旅行に来た。
···というか、来る以外の選択肢がなかった。
万「そう言えば今日は、アイドリッシュセブンのフライヤーが納品される日だったな」
のんびりと温泉に入って、あ···もちろん別々のだけど。
美味しいご飯も食べて。
その夕食後に、庭園の中を万理とふたりで···ゆっくりと散歩してる。
なのに万理は、今日1日中ふと何かを考えては仕事の話を呟いたりしてて。
『また仕事のこと考えてる』
万「だって仕方ないだろ?こんな急に休暇だって言われても、心の準備っていうか···でも、のんびり出来るのは滅多にないからいいんだけど、なんか落ち着かなくて」
これだもんなぁ。
社長がどうして万理を単独行動させなかったのか、よく分かった気がする。
『せっかく社長からのプレゼントなのに、いいの?それに、すぐ側には、こ···こ~んなカワイイ女の子がいるのに···なんて···』
万「え?カワイイ女の子?どこどこ?」
笑いながら周りを見回す万理に、酷すぎる···と拗ねてみせる。
『私が子供の頃はさ、買い物行くのにも迷子になるとか、危ないからとか言って手を繋いでたりしてたのはどこの誰でしたっけ?』
万「···千じゃない?」
···万理だよ。
お互い大人になっちゃって、そんな簡単に手を繋ぐなんて関係性もなくなってしまったけど。
千は···今でも躊躇いなく、ほら行くよ?なんて言いながら手を引いたりするけどね。
もっとも、万理がそういうタイプじゃないのは分かってるし。
それに私は、あの頃の万理の手の暖かさや大きさは、いつでも思い出せる。
自分の手を見つめて考えながら、それでも···やっぱり少し、大人になるってちょっと寂しいな···なんて思ったりもして。
こっそり繋いだりしたら、万理はどんな顔するんだろう。
なんてイタズラ心も浮かぶけど、この前のドッキリサプライズで···ちょっと怒られたからやめとこうかな。
この前は社長がみんなの盾になってくれたから、万理のお説教もほとんどなかったし。
私と千は、後からちょっと怒られたけど。
そんな事を思い出しながら、小さなため息を吐いた。