第11章 A little more to love (大神万理 )
『私たちはこういう仕事を何度も経験してるから、現場で急遽いろんな事が追加されたり変更されたりは慣れっこだけど、万理は初めての撮影で俳優でもモデルでもない、いろいろ詰め込んだら頭が爆発するからって。まぁ、爆発するしたらしたで面白い物が撮れるかもねって、千が』
千、そんな事なんて顔にも出してなかったのに。
いや、出てたかな?
壁に向かって肩を震わせてたし。
『だからさっきまでのは万理以外の周りがある程度の骨組みを作って、あとは側にいる私が万理がどう動くか感じながら流れを作ってた・・・つもり』
あくまでもつもりだよ?と笑う愛聖に、俺は周りに誘導されてレールの上を進んでたのかと笑う。
『急な事だったし、万理はそういう仕事で生きてる訳じゃない。だから監督も千や百ちゃんたちとの撮影みたいにキスシーンは入れてなかったんだけど・・・』
「じゃあ、どうして急に入れることに?」
『それはね、コピーライターさんが考えたこのキャッチフレーズを見た監督が、あった・・・これを見てやっぱりそのシーンは入れた方がインパクトあるかもなって言い出して』
「インパクトって、言われてもな・・・」
愛聖が指差す文字を辿ると、ナイトウエディングもいいな・・・なんて思わせる文字が書き込まれていた。
『だけど、どうしても無理なら他の方法をお願いしてみるから』
「それは出来ないよ。せっかくスタッフ総出で準備してるのに、俺の気持ちの問題を優先して貰うとか」
『でも万理は、』
「大丈夫・・・とは言い切れないけど、俺のせいで予定変更はさせたくない」
『分かった。じゃあさ、リハの時は無理して頑張らなくてもいいよ。その方が少し、気は楽でしょ?』
リハーサルか・・・本番の前にまずリハがあるんだよな。
リハ・・・・・・・・・?
そうだ、それならまだ少しは!
「愛聖、ちょっと相談・・・というか、頼みがあるんだけどさ」
『頼み?』
「うん、愛聖にしか出来ない頼み。集合かかる前にさ、ここでリハのリハ・・・させてくれない?」