第11章 A little more to love (大神万理 )
「・・・参ったな」
噴水のそばにある小洒落たベンチに腰を下ろし、俯きながら目を閉じてどうするかを考えていると、小さな靴音が目の前で止まる。
『そこの未来ある若者よ・・・なにか迷いごとがおありのようじゃな』
「愛聖、なにしてんだよ」
『もう!ちょっとはノッてくれてもいいじゃん!』
「今はそういう気分じゃないんだよ、俺の都合でね」
座る?と視線で自分の隣を示せば、ドレスを軽く寄せて愛聖は浅めに腰掛ける。
『あのさ、万理。そんなに分かりやすく苦悩に満ちた顔するくらい、次のシーン撮るの・・・嫌?』
「嫌とかじゃなくて、なんて言うか・・・困ってるよ」
どう返せばいいのか迷いながら言えば、愛聖はそっか・・・とひと言だけ呟いて、撮影スタッフがいる建物の中へと視線を向けて、何度か何かを言おうとしながらも、そのまま口を閉ざした。
沈黙が、長い。
困ってる、そう言ったのは単に実際に俺がそう思ってるからであって、別に愛聖の事が嫌いだからとか、そういう事でもなくて。
あれ・・・今の俺の言い方だと、そういう意味にも取れちゃうんじゃ?
「あのさ、愛聖。誤解がないように言っとくけど、今のは愛聖の事が嫌だからもか、嫌いだからとかじゃないからね?」
『うん・・・大丈夫、ちゃんと分かってるから。でも、そこまで必死に言われると、なんだかなぁ?』
クスクスと笑いながら愛聖は言って、軽く夜空を見上げた。
『ナイトウエディングって、そういうプランがある事を初めて知ったけど・・・ウエディングプランナーさんから説明を聞いた時、そういうプランも素敵だなって思ったんだよね』
ほら見て?と差し出された資料の絵コンテを見ると、愛聖の字でたくさんのメモが書き込まれている事が分かる。
「随分と細かくいろいろ書いてあるけど、俺は何も言われなかったよ?監督が流れは深く考えなくていいから、自然体で・・・とか、それくらい」
それは俺が素人の一般人だからなんだって、勝手に解釈してたから、敢えて追求したりはしなかったけど。
『それはさ、千や百ちゃんがそうした方がいいからって監督に言ってたからだよ。その代わり、万理が受けてくれたら流れの組み立ては監督と私たちが組めばいいからって』
「どういう事?」