第11章 A little more to love (大神万理 )
百「バンさんって実は・・・ものすっごいオオカミさん?イヤン・・・百ちゃんお嫁に行けない!」
「なに言ってんだよ、百くんまでおかしな事を言うなよ・・・そして愛聖、頼むからその顔やめろよ」
『えー?だって万理がそんな百戦錬磨な過去があるだなんて知らなかったし?それに百戦錬磨だったのに撮影のキスくらいで動揺するとか、不思議なんだもん』
だもん、じゃないだろ・・・そして百戦錬磨をそこまで連呼するな。
「俺は千たちと違って、そういう事に慣れてないんだよ。それに愛聖だってカメラ回ってなかったら出来ないだろう?」
撮影で仕方なくなら分かるけど、そうじゃないなら普通そう簡単には・・・
千「あぁ、分かった。万はお手本が見たいんだ?そうね・・・そういう事なら仕方ない。愛聖と僕で万にお手本を見せてあげよう」
『えっ?!あ、ちょっと千?!』
百「あーっ!ズルいよユキ!ねぇマリー、ユキの次はオレも!」
『わわっ!百ちゃん?!』
「はいはい、ストーップ!」
千と百くんとの間を行ったり来たり揺すられる愛聖を救い出し背中に隠す。
千「万・・・独占欲の強過ぎる男は嫌われるよ?」
「千が言うな。それに公衆の面前で何やらかすつもりだ。ついでに言えば俺は愛聖のプロダクション関係者だから、悪い輩から守るのは当然の仕事だよ」
千「万が正義の味方?」
「千じゃない事は確かだ」
これ以上ここでグズグズしてても仕方ないとばかりに愛聖を後ろに隠しながら監督の顔を見る。
「すみません監督。少し時間をください・・・その、覚悟を決めてきますから」
「覚悟?まぁ、いっか!よし、じゃあちょっと休憩入れよう」
監督のご好意に甘え、風にあたって気分転換をしようふらりと外に出る。
そこはこれから愛聖と撮影をする噴水が、月の光で煌めいた水飛沫を遊ばせている。
歩くだけとか、指導されたポーズをとかなら・・・出来てたんだけどな。
さすがにキスとか・・・反則だろ。
もしどうにかなったとして、そしたら俺は明日からどんな顔して過ごせばいいんだ?
なに食わぬ顔して事務所で仕事だとか、そんな事すら想像もつかない。