第11章 A little more to love (大神万理 )
支度を終えて撮影現場に移動して監督の元へと挨拶に向かう。
「すみません、お待たせしました」
「おぉ!いいねぇ、さすがRe:valeが激推しする程の事はある。それに衣装まで簡単に着こなすとは・・・大神くん、小鳥遊さんの所で本格的に活動してみる気はないかい?」
「ありませんよ、それは」
小「ホントに?」
「はい・・・って、社長?!どうしてここに?!」
小「いや~。向こうも片付いたし、急遽代わって貰ったとはいえ、万理くんに頼みっぱなしなのも悪いと思って車を走らせてたら愛聖さんからあの連絡でしょ?もう楽しみで楽しみで、ちょっとだけアクセル踏み込んじゃった」
そこは安全運転優先して下さいよ、社長・・・
ただでさえ撮影現場をあまり人に見られたくないと思っていたのに、まさか社長までいるとか。
小「それより愛聖さんはまだかな?」
「ここまで小鳥遊さんがワクワクするのも珍しいな。ちょうどさっき、Re:valeが迎えに・・・あぁ、どうやら来たようだ」
監督が目を細めるのを見て、俺も社長もその視線の先へと振り返る。
小「とっても綺麗な花嫁さんだ・・・アクセル踏み込んだ甲斐はあったよ」
「えぇ・・・ホントに綺麗だ・・・」
思わず零れた言葉に、これが本当の事ならと、込み上げる照れを無理やり押さえ込んだ。
千にエスコートされている愛聖は、マーメイドラインのドレスに長めのジュリエットベールを纏いながら、ゆっくり、ゆっくりと俺たちの所へ歩いて来る。
『監督、お待たせしました。万理も・・・えっと、どう?似合う、かな?・・・』
少し照れたように柔らかな光を反射させながら愛聖が微笑む。
それはまるで夜空に浮かぶ、月の輝きにも似ていて・・・
あぁ、そうか。
だからこの色の、なのか。
自分が着ているテールコートのジャケットを見て、千と百くんが何故この色を選んだのか、やっと分かった。
シルバーブルーのカラーにしたのは、先に愛聖のドレスを見ていたからなんだ。
「それじゃ役者が揃ったところで、簡単に流れを確認しよう。スタッフ集合!」
切り替えの早い監督の声に大勢のスタッフが集まり、流れや各人の配置を確認して準備が進められる。
とうとう撮影が始まるのか・・・失敗しなきゃいいけど。