第11章 A little more to love (大神万理 )
「前髪を?!いや、それはちょっと・・・」
控え室に入り支度を施されていると、ヘアメイクさんが俺の前髪を見てアレンジしようと言い出す。
さすがにあの傷跡をメイクで消しては貰っても撮影となれば撮影となれば完全に隠し切れるものでもないと思い、さりげなくその傷跡を手で覆う。
「大丈夫ですよ?メイクでほとんど分からないくらいになってますから。それでもって仰るなら、完全アップにはせずとも、アレンジしましょう」
抵抗する間もなく、ヘアメイクさんが嬉々としてアレコレとセットを進めていくのをぼんやりと眺めながら、それでもまだ、本当に俺でいいんだろうかと目を閉じれば、そこに騒がしく入って来る見慣れた2つの姿。
千「お待たせ。今度は万の衣装を選ばなきゃ」
百「おぉっ!バンさんカッコイイ!超絶イケメン!」
千「モモ・・・僕というものがありながら、万と浮気?」
百「違うよユキ!どっちもホンキ!」
千「今夜はサービスするよ?」
百「オレにはユキだけ!」
千「なら、よし」
またこのパターン・・・っていうか、今夜はサービスって、おいおい・・・
ところ構わず夫婦漫才を繰り出す2人に半ば呆れながら、忙しなく俺の支度をしてくれるスタッフの邪魔にならないように千たちに声を掛ける。
「百くん、愛聖はどんなドレスにしたんだ?」
百「めちゃくちゃヤバイやつ!あのまま連れ去りたいぐらい!」
千「モモ?それ以上は・・・」
百「あ、そうだった!ごめんユキ!」
めちゃくちゃヤバイってなんだ?!
露出がか?!
それともデザインが?!
百くんが連れ去りたい程のってどういう意味だ?
そう言われると気になるじゃないか!
デザインが凄いってなら、まぁ分かる。
ウエディングドレス、だしね?
それがもし千の時に着てたような、いや、それ以上の露出度高めなのだったら?!
可能性はなくはない。
ナイトウエディングって言うくらいだから、それなりに多少は露出してても・・・いやいやいや。
神様の前で何を誓うつもりだよ?!
あ、でもちょっとくらいなら見てみたい気も・・・じゃなくて。
だいたいそういった格好は普段の愛聖の仕事で見てるじゃないか。
何を今さら動揺してるんだ俺は。
大きくゆっくり深呼吸をして、平常心と3回唱える。
千「万・・・百面相は落ち着いた?」