第11章 A little more to love (大神万理 )
『まずは千との撮影からか・・・初っ端から疲れそう』
全ての支度を終えた愛聖が撮影場所に向かいながら苦笑を見せる。
「ほらほら、花嫁さんがそんな顔してたらダメだろ?・・・まぁ、気持ちは分かるけど」
なんせあの千が相手だからね。
絶っっっっっ対、アドリブ豊富に突っ込んで来るのは目に見えてるから。
「じゃ、頑張っておいで。行ってらっしゃい」
『うん、行ってくる』
ぽんっと背中を押すと、愛聖は振り返って笑顔を見せる。
あの愛聖が仕事とは言えウエディングドレスを着てる所を間近で見る日が来るなんてな。
「佐伯 愛聖 さん、入りまーす!」
俺と知り合った頃はランドセル姿だったって言うのに、不思議な感じがするよ。
現場でスタッフに迎え入れられた愛聖がスタッフに連れられて千と一緒に監督の所で何やら指示を受けているのを眺めながら、邪魔にならないように壁際へと寄る。
百「バンさん、マリーすっごい綺麗だね」
「百くん・・・控え室で待機してなくていいのか?」
いつの間にか隣に立つ百くんに驚きながらも、馬子にも衣装かもよ?なんて笑っては、撮影が始まり光の中に立つ愛聖に視線を戻した。
・・・けど。
「おかしい・・・いや、流れ的にはそれでいいんだろうけど・・・」
百「え?バンさん何か言った?」
「なんでもないよ、俺の独り言」
いざ撮影が始まれば、千も愛聖もNGを出すこともなくアッサリとそれを終えてしまう。
いつもRe:valeとの仕事が終わった愛聖から聞く話だと、千が愛聖に絡みすぎるアドリブのせいでNG連発とか、そんな話が多いのに。
あの千も、さすがに真面目にやろうと心を入れ替えたとか?
『万理ってば、ぼんやりしてどうしたの?次の百ちゃんとの撮影があるから、早く控え室に戻って準備しなきゃだよ?』
「ちょっと考え事してただけ」
『考え事?』
「まぁ、ね。それよりほら、次は百くんとの撮影だろ?準備しに戻らないと」
『そうそう!百ちゃんとの撮影は雨の日のウエディングバージョンだから気合い入れとかないとね~』
なるほど雨の日・・・
結婚式は晴天の日ばかりじゃないからって事か。
千は晴れの日だったけど、百くんは雨に濡れるのか。