第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
「仮にも抱かれたい男No.1の俺と同じベッドにいるってのに、いったいどんな夢見てんだか」
スヤスヤと無防備に眠る愛聖の頬を指先でツンと押す。
『・・・ん・・・楽・・・そんなに食べたら虫歯になるよ・・・』
なんの夢見てんだよ!
込み上げる笑いを堪えるように枕に顔を押し付ければ、モゾっと動いた愛聖の腕が俺の体に絡んでくる。
『ふわふわ・・・』
起きたのか?
体を捩り愛聖と向き合えば、さっきと変わらず・・・スヤスヤと寝ている。
寝返りを打った事で肌蹴た毛布を直してやろうとしても、しっかり抱き着いてる腕から抜け出すには難しく。
「離せって言ったり、お前からくっついて来たり・・・勝手なやつだな」
それでもなんとか腕を伸ばして愛聖を抱き寄せる。
「言っとくけど、お前から先に抱き着いて来たんだからな」
言い訳をするように言って、顔に掛かる前髪を直し、柔らかな唇にそっと触れるだけのキスをする。
「おやすみのキスだ。今夜は俺だけの夢を見ろよ?」
小さく笑って、もう1度キスを落とす。
相変わらず規則正しく届く寝息と、重なり合った体から伝わる暖かさに誘われ、瞼が徐々に重くなる。
愛聖といる時は、なにも飾らない俺でいられる。
素の自分に戻って、自然体で。
甘さなんかひと欠片もなくったって、それも心地いい。
いつかそこに、ひとしずくの甘さが加わった時。
その時2人で一緒に、その甘さに溶けあえればいい。
そんな未来を夢見るように、そっと愛聖を抱きしめて眠りについた。
~ END ~