第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
『なんか、楽にファンの子からの方が嬉しいんじゃないかって言ったら急に恥ずかしくなって』
「は?なんでだよ」
『だって・・・まるで私が楽の事が好きでヤキモチ妬いてるみたいじゃん。別に楽は普通なのに』
最後のひと言はいらねぇやつだろ。
ま、いい。
「俺はお前を好きだけど、お前は違ったのか?」
『・・・え?』
「そうか・・・違ったんだな」
軽く目を伏せながら言えば、愛聖は少し困った顔で俺を見る。
『私はまだまだお仕事楽しいし・・・それに、恋愛がどうのとか・・・よく分からないし・・・』
オロオロとしながら話す愛聖に、つい、我慢できずに笑ってしまう。
「ばーか、なに勘違いしてんだ。俺が言ってるのは仲間として好きだって事だ」
『えっ?!』
本当は、そうじゃないけどな。
でも今はまだ、どんなに足掻いても届かないってのは分かってるから。
「あ、もしかして俺がお前に惚れてるとか思った?」
『ち、違うし!全然違うし!』
「さっきのお前の顔・・・笑える」
『だから違うって言ってるじゃん!楽のバカ!嫌い!!』
まるで子供のように怒り出す様子に笑いが止まらなくなる。
本当なら、誰に反対されようとお前を掻っ攫ってやりたいところだが・・・俺もまだまだってところだな。
「ほら機嫌直せって。マカロンひとつやるから・・・美味いぞ、これ」
『それは私が作ったんだから味見で何回も食べたし!楽が好きなように美味しく食べればいいじゃん!』
「俺が好きなように食っていいのか?」
『お好きにどうぞ!』
へぇ・・・俺が好きなように、ね。
「じゃ、そうするわ」
愛聖の言葉に名案を思いつき、箱を持ったままベッドに上がる。
「俺が好きなようにしていいんだろ?じゃ、まずこれはお前が先に食え」
ピンク色のマカロンをひとつ取り愛聖の口元に寄せて、早く食えよと急かしてみる。
『私が食べたらあげた意味ないじゃん・・・』
「いいから早く食え。ほら、アーンって」
戸惑いながらも開けた口にマカロンを入れて、そのまま・・・口付けた。
『んっ・・・んんっ・・・?!』
「ん・・・甘いな」
『ばっ、バカ!なにするの!!』
慌てて俺の胸を押し返す愛聖の手を掴み、距離を縮めて視線を絡ませる。