第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
龍 ー 垂れ耳うさぎだなんて愛聖らしいなぁ。2人ともカワイイよ。オレも今度着てみようかな? ー
龍・・・お前はどっちかって言えば、世間的にはオオカミだろ。
そうじゃなくて!!
いったいどれだけの範囲で拡散されてんだよ!
『楽・・・ご愁傷さま、かな?』
「お前が言うな・・・ったく、俺のイメージが変な方向に変わったらどうすんだよ」
閉じたスマホを放り出し、そのままソファーに寝転がる。
『拗ねないでよ・・・もう、仕方ないなぁ。ちょっと待ってて?』
ベッドルームに行った愛聖が戻れば、その手に箱を持って俺の前にペタンと座る。
『これ、楽に。失敗しないように三月さんに側で教えて貰いながらだけど、最初から最後まで私が1人でちゃんと作ったの』
「俺に?」
そういやさっき、和泉兄からのメッセージになんか書いてあったな。
それが・・・これか?
おもむろに受け取り箱を開けば、そこにはカラフルな物が入ってる。
「マカロン、だっけか?なんで俺に?」
『なんでって、今日はバレンタインだから。本当は1日ずらして渡そうと思ったんだけど・・・』
「なんで1日ずらす必要があるんだよ」
『だって・・・』
きっと凄い大量にチョコレートが届くんだろうなって思ったから・・・と愛聖が眉を下げた。
『ファンの女の子たちから貰う方が、楽だって嬉しいんじゃないかな?って。こんな日に私と一緒の仕事で、なんかゴメンねっていうか、お詫びの品・・・というか。と、とにかくちゃんと渡したからね!・・・おやすみなさい!』
「おやすみって、おい!」
言葉通り脱兎の如くベッドルームへと駆け込む愛聖に唖然としながらも、小さなマカロンをひとつ摘んで口に入れる。
「ちゃんと食える・・・っつうか、美味い」
調理に関して驚くほどアウトな愛聖に、ここまでちゃんと食える物を作らせるだとか。
和泉兄・・・なかなかやるな。
とか、敵陣のやつを褒めてる場合じゃねぇな。
「よ、っと・・・」
ソファーから立ち上がり、箱を持ったまま自分もベッドルームへのドアを開ける。
「愛聖、どうせなら一緒に食・・・なにしてんだお前?」
飛び込んでくるビジョンは、大きなぬいぐるみに顔を押し付けてベッドに座る愛聖がいる。