第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
「はぁ・・・精神的に疲れたから俺はもう寝る。お前は?」
被ったフードを外しながら愛聖を見れば、長めの前髪をくるくると指先で触りながら俺を見る。
『私?う~ん・・・もうちょっと起きてる。っていうか、楽も起きてて欲しいなぁ・・・なんて。それにさ、まだ写メ撮ってないし・・・って事で、ジャーン!』
自分のスマホを取り出して、一緒に撮ろうと隣に並ぶ。
『普通に並んでると背の高さが違い過ぎて上手く撮れないから、ソファーで撮ろう?』
「もう・・・どうにでもしてくれよ・・・」
早く早くと腕を引かれて、言われるままにソファーに座れば、ポーズはこうだとか、今度はカメラ目線にしろだとか言っては楽しそうにシャッターを切り始める。
『あ、これ良くない?私も楽もちゃんとカワイイ!』
「ちゃんとの意味が分かんねぇけど、まぁ・・・悪くはないな」
ソファーに背中をグッと預けながら言って天井を仰いだ。
『じゃ、これにしよっと。まずは先に監督さんに送って、それから・・・あとはみんなに・・・』
機嫌よくスマホを弄りながら、撮り終えたばかりの写真を・・・って?!
「おい!お前いま、まずは先に監督にって言ってたよな?!」
『・・・言ったけど?』
「その後なんて言った?!」
『その後って、みんなにも送ろうっと!かな?』
かな?じゃねぇよ!!
「監督の指示だって言うから写メらせたのに他に誰に見せようとしたんだよ!」
『他のって、寮にいるみんなとか、天や龍・・・だけど』
それはつまり、アイドリッシュセブンの全員と天と龍ってことだよな。
「そのスマホを貸せ。俺が直接削除する」
愛聖の手からスマホを奪い取り、アルバムから全て消してやる!と画面を見れば。
「送信・・・完了・・・?お前まさか」
『えへっ・・・そのまさかです』
手遅れかよ・・・
ガックリと項垂れていれば、途端に震え出す愛聖のスマホに驚く。
『あ、早くも反響があったみたい。みんなからメッセージが来てる』
ほら!と見せられた画面に目をやれば、流れるように次々と表示されるメッセージの数々。
陸 ー 愛聖さんカワイイです! ー
環 ー マリー、超カワイイ。つうか、俺も同じの着たいから今度着ようぜ ー
なんでこんな物が着たいんだよ。