第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
『ちゃんとしたうさぎちゃんだから。知らないの?ロップイヤーっていう種類なんだよ?』
知るかそんなの!と返しながら、垂れ下がった両耳の端っこをチョンと摘んで見せる姿は・・・まぁ、その、アレだ・・・カワイイんじゃないか?とは思う、が。
「全身包まれてるみたいなパジャマ着るとか、お前どんだけ腹丸出しになる寝相なんだ?子供か?」
『失礼ね!お腹丸出しなんかしてないから。それに、ちゃんとお揃いで楽の分もあるから心配しないで』
「心配なんかしてねぇよ」
・・・は?
お揃いで?
俺の分もある?
『ほら見て?私のはピンクだけど、楽のはグレーにしてみた!』
「はぁっ?!なんで俺までそんなもん着なきゃいけねぇんだよ!アホかお前!」
『楽は背が高いからさ、サイズ探すの結構大変だったんだ~』
いや、人の話を聞けよ!
『ね、ちょっと着てみて?』
「着ねぇっていってんだろうが!」
グイグイと押し付けてくるふわふわモコモコのやつを押し返しながら、絶対着ねぇからな!と再度突っぱねる。
『新婚さんって、お揃いの物がたくさんあると思ったし。カップとか、パジャマとか・・・どうせなら可愛いのでお揃いがいいなって・・・思ったのに・・・』
ギュッと俺に押し付けてたふわモコを抱きしめながらシュンとした目には、今にもこぼれ落ちそうなキラリとしたモノがあって・・・
「その手には騙されねぇからな。なんたって愛聖は女優だからな」
『・・・バレたか』
潤んだ目を軽く擦った愛聖は、イタズラが失敗した子供のように苦笑を見せた。
『せっかく楽の為に選んだけど、どうしても楽がイヤだって言うなら、仕方ないよね・・・』
小さなため息を吐いて、愛聖が自分のフードを目深に被る。
なんだこの・・・チクリとする罪悪感は。
『楽しかったのにな・・・どんなお揃いにしようかって考えてる時』
それを聞いて、またひとつチクリと何かが心に刺さる。
『私が着るには大き過ぎるから無理だし・・・そうだ!このサイズなら四葉さん大丈夫かも?こういうの好きそうだし、寮でお揃いで着てインスタにアップしよっと。アイドリッシュセブンのメンバーとお揃いでーす!って』
四葉・・・あぁ、あのやたらと愛聖に懐いてるヤツか。
揃いのうさぎを着た姿を想像して、思わず眉を寄せる。