第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
どんな感じだよ!と笑いながらツッコミを入れ、テーブルに料理を並べていく愛聖を眺める。
誰が用意したんだかフリフリ甘々のエプロンを付けて食事を用意するとか、まるで新婚みたいじゃ・・・いや、そもそもこのプロジェクトはそういう設定だったよな。
けど、もし・・・先の未来で俺たちが本当にそうなったとしたら、毎日がこういう感じになるのか?
「なぁ、一応俺たちの設定って新婚ってやつだよな?ちょっと、アレ言ってみろよ」
『アレって?・・・あぁ、アレね。でもなんで?楽は千をお手本にしたいの?それならお手本にはならないよ?だって千は逆だし』
「なんで俺が千さんを手本にするんだよ。っていうか、逆ってなんだし」
『だから逆だよ。私が千の家に行くと、千が・・・お帰り、お風呂にする?ご飯にする?それとも・・・僕?って』
聞いたのは俺だけど・・・なにやってんだよ千さん。
いや、待て。
「お前、それでなんて答えてんだ?」
『完全スルーだよ?千の場合そんなの毎回のことだし、私だけじゃなくて百ちゃんにもやってるし』
聞けば聞くほど、千さんて分かんねぇ。
『さ、食べよっか?』
「あぁ・・・つうか、カレーはまだしもサラダまで持たされたのか?」
『そんなわけないでしょ!私だってサラダくらいは・・・なんとか無事にカタチになるよ!』
なんとかカタチにって、それもどうなんだよと笑い返しながら料理を口へ運ぶ。
「美味いな、これ」
『でしょ!!三月さんの作ってくれるご飯って全部美味しいんだよ!きっと三月さんのお嫁さんになる人は毎日美味しいご飯なんだろうなぁ』
「なんだよそれ」
キラキラと目を輝かせる愛聖に、ちょっとだけ面白くないと感じる自分がいる。
『楽、なんか怒ってる?』
「フン・・・別に」
『えっと・・・楽が作る料理も美味しいよ?』
「取ってつけたように言うな」
そう言いつつも、そんなひと言でモヤモヤが晴れてしまう自分が・・・いた。