第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
ほんっと、からかいがいのあるヤツ。
シャワーの熱を浴びながら、さっきの様子を思い出して、ふと考える、
そういやアイツ、料理に関しては全くと言っていいほど出来なかったよな?
飯・・・俺が作るのか?
いや、俺が作った方がまともに食える・・・よな?
・・・作るか。
待てよ?
アイツも俺も今日ここに来たばかりで買い物なんてしてない。
って事は、飯を作る以前に買い物からスタートなのか?
ったく・・・しょうがねぇな。
そう思いつつも、なぜか緩む口元に違和感なんて感じない自分もいた。
「飯・・・いったい誰が?」
バスルームから出て、部屋に漂うスパイスの香りに首を傾ける。
取り敢えずの格好でキッチンへと向かえば、鍋をかき混ぜる愛聖の後ろ姿が目に入った。
『あ、楽。もう少しだからちょっと待っ・・・ばか!裸のままで来ないでよ!!』
「はぁっ?!下は履いてんだからいいだろうが!」
『裸みたいなもんじゃん!ちゃんと服着てよ!』
「全裸じゃないだけマシだろ!ったく・・・それよりそれ、お前が作ったのか?」
髪をタオルで拭きながら聞けば、予想のナナメ上の答えが返って来る。
『えっとこれはね・・・三月さんが今日だけは持って行けって作ってくれたの。ほら私、料理全般アウトだからって』
三月・・・?
あぁ、アイドリッシュセブンの中にいる兄弟のやつか。
「お前、これから俺と暮らすってのに初日から浮気かよ」
つい面白くなくて尖った言い方をしてしまう。
『そうじゃなくて、初日だからこそって三月さんは言ってたんだよ?簡単な引越し状態なのに、イキナリ楽が食事作りなんて大変だろうからって』
「・・・俺が作ることは予想されてたんだな」
『それから、天下のTRIGGERの八乙女楽が腹痛で眠れなかったら騒ぎになるだろ・・・って』
「いい心掛けだな」
『でもさ?天下のって言ったらRe:valeなのにね』
「ツッコミどころはそこかよ!」
なんでそこでRe:valeが出てくるんだよ!
まぁ、なんせアイドリッシュセブンのヤツらは、普段の生活を愛聖としてるワケだから、壊滅的な料理状況がよく分かってるから気を利かせたんだろうが。
当の本人が、そこに大して気付いてないのはどうしようもねぇな。
『ってな感じで、ご飯食べよ?』