第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
「だって、いつも一緒に寝てるのにお留守番させたら可哀想じゃない」
「あのなぁ・・・そうじゃなくて!」
っていうか、他の男から貰ったモンを持ち込んでんじゃねぇよ!
大事そうに抱きかかえるぬいぐるみを取り上げて放り出し、その勢いで愛聖をベッドへ押し倒し、そのまま軽く覆い被さる。
『ちょっ、楽・・・重い・・・』
「お前・・・男と女が同じベッドで過ごすって意味、ちゃんと分かってんのかよ」
つぅ・・・っと親指で唇をなぞれば、愛聖は目を泳がせながら顔を逸らす。
「逸らすな。仕事だから平気、なんだろ?」
ジワジワと攻めれば、隠し切れないほど焦りだした愛聖が手足をパタつかせる。
『楽・・・ふざけ過ぎ・・・重たいからどいて』
「ふざけてないって言ったら?」
『・・・っ?!』
俺の下から逃げようと体を捩ったせいで乱れた服の隙間から肌に直接触れれば愛聖が息を飲んだ。
「愛聖・・・」
そっと頬に手を添えながら、ゆっくりと顔を近付け。
そして・・・ムキュっと鼻を摘んでやる。
『ふぎゃッ?!』
「なんつー色気のない悲鳴・・・ばーか、冗談だ。どうだ、驚いたか?」
笑いながら体を浮かせて起き上がり、ついでに愛聖の手も引いて起こしあげれば、顔を真っ赤にさせたまま愛聖が怒り出した。
「そんなに怒るなよ。まさかこんな単純な手に引っかかると思わなかったんだけど・・・な?」
『楽のバカ!一瞬だけ覚悟を決めそうになったじゃない!』
「覚悟?へぇ・・・それはそれは勿体ない事をしたってもんだ」
『・・・もう知らない!どっか行っちゃえ!』
さっきまで大事そうに抱えていた大きなぬいぐるみを俺に向けて投げつけ、顔を背けられる。
「あっそ?じゃ、俺はどっか行っちゃうかね」
止まらない笑いを堪えながらクルリと背を向ければ、背中に視線を感じて足を止める。
『どこ、行くの?』
掛けられた声に振り向きながら荷物から出したタオルを見せ、笑う。
「なんだ、寂しいのか?風呂だよ風呂、なんならお前も一緒に入るか?」
からかうように言って、一緒に入るなら早く支度しろ?なんて更に追い討ちをかける。
『は、入るわけないでしょ!!』
「じゃあ・・・覗くなよ?」
『覗きません!!!』