第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
いま愛聖がいる場所がリビングで。
その向こうにはダイニングキッチン・・・
残る部屋は、あまり考えたくはないが・・・この、ベッドルーム、か?
衝撃の大きさに、思わず手荷物を足元へと落とす。
『楽、大丈夫?なんかいま、大きな音がしたけど』
ひょこっとドアから顔を覗かせる愛聖に、まるで錆び付いたロボットのようにぎこちなく振り返る。
「愛聖、ちょっと・・・聞いていいか?」
『なに?』
「お前、今日、どこで寝るんだ?」
『どこって、ベッドルームはこの部屋でしょ?』
「じゃあ、もうひとつ聞くけど・・・お前がここで寝るなら、俺は?」
『なに寝ぼけてるの?ベッドルームはここなんだから、この部屋じゃないの?・・・変な楽』
変なのはお前だろ!!とツッコミを入れたいところだか、いまはそんなことをしている場合じゃねぇ。
「お前まさか、俺と一緒にベッド使うつもりか?」
『なんで?ダメなの?』
「そうじゃなくて、その・・・い、いいのかよ」
『いいって、なにか?』
「だから!!同じベッドに俺と一緒に寝るって事だよ!」
クソッ・・・噛み合わない会話に沸き立つ苛立ちを抑えながらも言えば、帰ってきた言葉は・・・
『別にいいんじゃない?・・・お仕事だし』
ニコニコと笑顔を崩さない、返事で。
「そうかよ。ったく・・・こっちの気も知らないで・・・」
『え、なに?』
「なんでもねぇよ」
何度目かのため息を吐いて、簡単に荷解きをする。
その後ろで愛聖も幾つかのスーツケースからゴソゴソと荷物を出しては機嫌よくベッドに大きなぬいぐるみを並べ始め・・・ぬいぐるみ?!
「ちょっと待て。お前そんなもの並べてどうするつもりだよ」
『どうするって、寝る時これがないと寂しいじゃん。見て?カワイイでしょ!これね、四葉さんから貰った王様プリンの抱きぐるみなの!それからこの子は一織さんから頂いたウサちゃん!どっちもふわふわフカフカで抱き心地抜群なんだよ?』
四葉・・・あぁ、あのイマイチ愛想のないヤツか。
それに一織って、あの兄弟の弟の方か?
あんな涼しい顔してピンクの巨大ウサギのぬいぐるみ買うとか、なんか狙ってんのか?
『それからねぇ、この子は・・・』
「まだあるのかよ!」