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香り娘と薬売り

第3章 二口女 ≪前編まで公開≫





薬売りと別れた千咲は早速目当ての家へと訪ねた。戸の隣には小さく葉っぱの絵が描かれている、ここで間違いないようだ。


「お邪魔いたします、ひぃ!」

中を覗くと、目の前にはギョロリとした目の男が立っていた。思わず驚きの声を上げてしまった千咲は簡単に謝り、男と距離をとった。

「・・・らっしゃい」
「お店の方でしたか」

薬売りの口数の少なさとはまた違う、無口に近い男は千咲が中に入れるようにと道を開けてくれた。しかし、店の中はがらんとして、とても商売をしているようには思えなかった。

「お聞きしますが、こちらは薬草を扱っていると」
「・・・これか」

薬草が入っているとは思えない大きな引き出しから、布に包まれた何かを取り出した。千咲の前まで店主がくると、手のひらの上でそれを広げる。黄色味がかった枯葉だ。

「ここらでよくとれる、痛み止めの葉だ。
・・・うちはこれしか置いてねぇ」
「これはおいくらでしょうか」
「・・・5文」
「随分お安いのですね」
「・・・・・そりゃ、すぐそこで採っただけだからな」


無事に薬売りからの使いは済んだが、千咲の目的の品物は無かった。長居したいような場所でもないためお礼を伝えて出ようとすると、まさかのまさか、店主に引き止められてしまった。自身の眉間に皺がよりそうなのを感じつつも店主の方へ振り返った。




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