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香り娘と薬売り

第3章 二口女 ≪前編まで公開≫





「いや、柄でもねぇんだが・・・
こんな店に来るやつも珍しいから、特別に一つ忠告だ。
さっさとこんな町から出てくんだな。
・・・女に多いみたいだが、後ろからずっと女の声が聞こえるんだと」
「女性の声、ですか。それに問題でもあるのでしょうか」
「なんでも、声が聞こえたやつは一緒にいた連れを殺してしまうんだと。
・・昨日も偶々訪れたっていう夫婦の女の方が気が狂って夫を殺したんだとよ」
「女性はどうなったのでしょうか」
「さぁな、俺も今朝に少しばかり聞いただけだから、しらねぇさ。ここらじゃよくあることだ」



何にもなさそうな小さな田舎町だと思っていたが、話を聞き何かありそうな気配を感じた千咲。もしかすれば自分の出番かもしれないのだ。背中に背負っている香木の箱の肩紐をきゅっと握り、薬屋を出ていった。

そんなに広くない町なので、その夫を殺したという妻と薬売りが向かっているであろう宿屋と合わせて千咲は探すことにした。


綺麗に土地は区分けされており、簡単に頭の中で地図を描くことができてしまう。しかし先程の薬屋以外に目立った店が特にあるわけでもなく、長屋が並んでいたり小さな畑が見えるくらいだった。


「おい、そこの変な箱を背負った女、止まれ。そして顔を見せよ」

大切な箱を侮辱されたことにむっとした表情を見せた千咲、言われた通りに止まりはしたものの、声のした方を特に見ようとしたりする素振りも見せないまま立ったまま。声の発した男は動く気配がないのを察して、千咲の正面へと回り込んだ。




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